「大食軒酩酊」という号がしめすように、食事に酒が欠かせないわたしのことである。食事の献立にあわせて、日本酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、ブランデーなど、さまざまな種類の酒を飲んでいる。
そこで酩酊が食卓に着いている時間は、飲酒の時間と主食を口にする食事時間に大別することができる。
しかし、朝食に酒を飲むことはない。自家製のプレーン・ヨーグルト汁椀一杯分に、味噌や香辛料を加えて味をつけて、黒ニンニク一片をのせて食べるのが、平常の朝食である。
朝寝をしたときには、朝風呂にはいってから、朝食のテーブルに着くことがおおいが、そうかといって朝酒を飲んだら、本稿第五一回で紹介した会津磐梯山の民謡の「朝寝・朝酒・朝湯が大好きで、それで身上(しんしょう)つぶした」という小原庄助さんになりかねないので、朝酒は飲まない。
ヨーグルト一椀ですませる酩酊の日常の朝食時間を計測すると、平均二〇分ということになった。
昼食と夕食には酒が欠かせない。
休日でも、家の近くにある石毛研究室に出勤して執筆をしたりするので、ふだんの昼食は外食である。
四月一〇日(水)に研究室から徒歩五分のところにある大衆食堂で食べた一五〇〇円のランチ・メニューを記してみよう。
刺身・エビの天ぷら・焼き魚と卵焼き・根菜の煮物
牛肉の煮物・香の物・味噌汁
米飯・ 熱燗の日本酒一合
一二時一五分~三〇分におかずを酒肴に燗酒を飲みきったあと、残ったおかずと香の物・味噌汁で米飯を食べて、緑茶を飲み、一二時四五分に昼食がおわった。
ランチには、アルコール飲料を欠かせないのが酩酊の日常の食生活である。そうかといって、酔っ払って午後の仕事にさしつかえるほど昼食に酒を飲むことはしない。
食事を楽しむための酒なので、日本酒の熱燗一合または、生ビールの中ジョッキ一杯、グラス・ワイン、ハイボールなどを注文するのが普通の昼酒の量である。
焼酎やウイスキーなど、アルコール度数の高い酒をストレートで飲んだら、強烈なアルコールが舌を麻痺させ、副食物の微妙な味を賞味できないような気がするので、蒸溜酒は水割りやお湯割りで飲むのが普通である。
朝食と昼食は、わたし一人で食べるのにたいして、夕食は妻と娘とわたしの三人が一緒に共食をするのが普通である。
ただし、妻と娘がテーブルを囲むのが七時近くなのにたいして、わたしは六時すぎには着席している。そして、その日に配達された郵便物や夕刊二紙に目を通し、TVを見ながら、一人で晩酌をはじめるのである。
飲酒に時間をかけることができない昼の外食とちがって、わが家の夕食時には家族が着席する一時間くらい前から、わたしは食卓で酒を楽しんでいるのだ。
写真は四月一〇日の家庭での夕食である。夕食のおおくは、酒肴としても、米飯のおかずとしても食べることができる。この日は和食の料理なので、熱燗の日本酒を飲むことにした。妻は酒飲みではないので、酒を温めたり、グラスに注いだりする家での酒に関する仕事は、わたしがしなければならない。
おなじ食物を、酒を飲みながら口にしたら「酒の肴」とされ、主食である米飯や味噌汁と一緒に食べたら「おかず」の役割をになうことになる。
しかし、わたしにとって、「主食」と「おかず」の区別のつきづらい食べ物がある。それが「ざる蕎麦」、「盛り蕎麦」である。
「天ぷら蕎麦」を肴に一杯やったりするときは、蕎麦は「酒の肴」・「おかず」の役割をしている。しかし、飲み終わってから腹に貯めるための主食として「ざる蕎麦」や「盛り蕎麦」を注文することもおおいのだ。