味の素食の文化センターが選定した今月おすすめの書籍をご紹介しています。
たとえばラオスのホームガーデン(屋敷地の中で多様な植物種が多層的に植えられている空間)には、市場では見かけない在来野菜が植えられ、「生きた文化財」として引き継がれていて、在来野菜を採集する(つかう)ことから育てる(つくる)ことへの転換を促す場となっているそうです。これはほんの一例ですが、ほかにも、世界の様々な食文化の継承事例をこの本から学ぶことができます。
「十人の日本人がいたら十人それぞれの和食がある」「和食とはその土地の素材を、素材の味を生かしてシンプルに料理したもの」「和食は"いつものごはん"」「和食は究極の"がんばらない料理"」と言い切ってもらえると安心し、日頃和食に感じているモヤモヤ感もすっきり。和食には崩す要素も必要と主張し、最終章でユニークかつ主張が感じられる4つの和食レシピも提案されています。
小麦と米の利用の歴史、小麦粉と米粉のちがいやその科学、米粉でつくる小麦粉調理、今後への展望など、米粉を理解しおいしく活用する秘訣が紹介されています。小麦粉との比較実験、調理科学の観点から米粉のメリットや使いこなすコツ、例えば天ぷら粉ではダマができにくい、パンケーキでは牛乳や卵の量を増やすと扱いやすくなる、など様々な知見が記載されています。
著者は生粋の料理人で、「京料理の今後の発展のためには定義を明確化すること」という強い信念から本の中で草案を提起されています。戦後に京料理という名称が生まれ、現在は「会席京料理」(宴席)、「京懐石料理」(もてなし)、「カウンター割烹」(食事)の三業態に分かれます。京料理も世界の料理の影響を受け続けており、京料理の価値を知りながら発展させる必要があるでしょう。
日本とアメリカの産業革命期を生きた女性たちのライフヒストリーと、激動する社会の様相との関係を論じ、その中に彼女たちの「日常茶飯」が重ね合わされることによって、複雑な社会や人間関係がさらに浮き彫りになります。日本の女工にとっての焼き芋と、アメリカの女性労働者にとってのドーナツとは、単なる「間食」ではなく位置づけが異なるという文化的な背景も興味深いです。