『大日本物産図会』にみる「食」「時代」「人々」第1回「日本の食文化」
味の素食の文化センターが選定した今月おすすめの書籍をご紹介しています。
オペラ作曲家として大成功をおさめた一方で美食に目覚め、料理人アントナン・カレームらとも交流した「筋金入りの食通」であるロッシーニと料理、そしてその生涯を研究的視点で取り上げた本です。トリュフ、フォアグラ、マカロニ、牡蠣、ワインなどをこよなく愛するロッシーニには数々の美食伝説がありますが、著者はロッシーニの手紙やレシピをもとに真実の姿を見出していきます。
味の素食の文化センターが40年以上開催している研究討論会「食の文化フォーラム」の公式本。今回は歴史・地域・グローバル化の視点から朝鮮半島の食を取り上げ、北朝鮮の飲食文化、韓国社会や食文化の変化、グローバルに脚光をあびるK-FOODなど、独自の発展を遂げる北朝鮮・韓国の食文化の変遷が読み解ける興味深い論考です。朝鮮半島のみならず広く食の未来を考えるヒントにもなります。
著者はインドに駐在経験もあり、各国の料理事情をウォッチし続けている南アジア研究者。「curry」という言葉の語源やその伝播、誤解、また「インド中華料理」や日本におけるインド料理、飲料やデザート、そしてインドで食べられている納豆に至るまで、インドの食文化とカレーについての幅広い知見を伝えてくれる一冊です。多様なインド料理の魅力や背景を伝えたいという思いが伝わります。
表紙を拡大していただくと、調査と集計結果のハイライトがみられますが、ほかにも「5カ国訪日外国人に聞く日本の食」(好きな料理のトップは寿司ですが、国により傾向も異なります)、「野生鳥獣のジビエ利用」、「食文化を受け継ぐことの意識」など、興味深い調査結果が多数おさめられています。執筆や企画など、様々な目的での参考資料としてご活用いただけるのではないかと思います。
中華料理、ドイツ料理、フランス料理、タイ料理、ロシア料理、イタリア料理、スペイン料理、アメリカ料理、インド料理。それら未知の味を、日本人がどのように受け入れてきたのか。著者の豊富な飲食体験や飲食店の栄枯盛衰を通して辿る日本の外国料理の歴史や、最終章の「東京エスニック」で語られる「東京の人は油断している」という考察まで、ページを繰る手が止まらなくなります。