
わたしは毎日のように石毛研究室という大阪近郊にある事務所に出勤して仕事をしているので、昼食は外食がおおい。外食店での会計を記したレシートをノートに貼付けた記録をもとに、「昼食代のレシート」という文章を本誌一三0前号に寄稿した。以下の文章はその続きである。
レシート数のおおい順に、一位から五位までの店での食事内容を記してみよう。店の評判にかかわることなので、具体的な店名は記さずに、ABCの順であげることにする。
第一位は、一年に二〇回訪れたA店で、そこは関西各地で麺類とご飯の和風ランチを提供するチェーン店である。ここでは「大名天ざる」と「味わい三種そば」が五回、「越後そば」三回、「穴子天ざるそば」二回、ご飯物では「冬御膳」二回、「夏御膳」二回、「秋御膳」一回のレシートが貼られている。
第二位は、一〇回昼食を食べたB店・C店・D店である。
B店は「牛丼」と「すき焼き」のチェーン店を全国展開していることで知られている。ここでは一人前のすき焼き肉や野菜を供して、熱い鉄板に小鍋をのせてつくらせる「すき焼き定食」を注文することがおおい。
C店は、石毛研究室の前にある和食堂である。ここでは和風ランチを注文すると、米飯のほかに、小さな盛りソバがついてくるので、ソバ好きのわたしがよく訪れる店である。
D店は、一人前二〇〇〇円以上する「しゃぶしゃぶ」を売り物にしているが、わたしが昼食に注文するのは一五〇〇円程度の昼定食である。
スパゲッティなどのイタリア料理や、オードブルからはじまるフランス料理のランチ、朝鮮料理店や中華料理店の昼定食など、そのときどきの気分によって、さまざまな昼食を口にするわたしだが、上記のA~D店は、いずれも日本料理の食堂である。レシートをみて、「やっぱりオレは日本人だな!」と思ったことである。
関東地方の東京近郊で少年時代を過ごしたわたしだが、関西で暮らすようになってから六五年たった。いまでは昆布だしと薄口醬油の関西風の料理をおいしく楽しんでいる。
その例外は麺料理である。ウドン好きの関西人とちがって、わたしはソバ好きだ。盛りソバを、カツオだしと濃口醤油のきいた関東風の汁につけて、すすり込むのだ。そのとき、「やっぱりオレは関東人だな!」と思うのである。
飲み助のわたしのことである。朝酒をすることはないが、昼食を楽しむためには酒が欠かせない。ただし、食後に石毛研究室に戻ったら仕事が待っているので、酔うほど飲むわけにはいかない。そこで、昼の外食では、日本酒に換算したら一合程度のアルコールを摂取する。
フランス料理やイタリア料理のレストランでの昼食にはグラスやデキャンタに容れたワインを飲むし、中華料理店では白酒を注文することもある。
一〇回訪問したB店のレシートには、中瓶のビールが合計十二本記されているが、この店ではこの瓶ビール以外の酒類を販売していないからである。
レシートによく記入されているのが、生ビールの中ジョッキである。冷たいビールで、まず喉の乾きをとめてから、食事にとりかかろうというのである。
ビールではアルコール分が物足りないと思ったときには、ハイボールを注文する。
和食堂へ行くことがおおいので、昼食には日本酒を飲むことが多く、A~D店で二三回日本酒を注文している。いずれも一合瓶で、そのときの好みにあわせて、冷酒か熱燗で飲む。
芋焼酎、麦焼酎などの焼酎が三〇回あらわれるが、水割か、お湯割にして飲むことがおおい。