
『vesta』91号
「1962年の食」
2013.07.10
責任編集 前川 健一
食文化の資料を読んでいて、コメの消費量は1962年にピークに達し、以後下落し続けることを知ったとき、その当時の食事情の全体像が知りたくなった。石原裕次郎が銀座をカッポしていた頃(「銀座の恋の物語」1962年)、あるいは高級スポーツカーで未舗装のほこりだらけの道を九州まで走っている頃(「憎いあンちくしょう」同じく62年)、日本人はどのような食生活をしていたのだろうか。
私は1952年生まれだから、62年の記憶はある。しかし、たとえその当時すでに大人であっても、自分の家庭と近所の食生活の記憶しかないだろう。だから、ごく一部ではあれ、さまざまな地域に住むさまざまな人の、やっとコメが満足に食えるようになった時代の食生活をちょっと覗いてみたくなった。
年表でたどる食事情
データで見る食事情
Ⅰ 日本人と米/原田 信男
1960年代の食-農村/編集部
Ⅱ 家庭の事情
①高度経済成長期の料理メディア史/大岡 響子
②1960年代からの台所革命-実用性から美観へ/真島 麗子
Ⅲ 1960年代の学校給食と食生活/江原 絢子
Ⅳ あの頃の、東京の外国料理店/前川 健一
Ⅴ 1960年代のフードシステム/中嶋 康博
1962年の買い物事情/前川 健一
Ⅵ 都会の食、地方の食
①その頃 私は -みちのく仙台の食-/木村 比呂美
②1960年代の東京の食と異文化体験/茂木 美智子
③1960年代のある料理学校のメニュー/奥村 彪生
④1960年代の沖縄の食/尚 弘子
Ⅶ 食の記者はあのころ、何を気にしていたか/村上 紀子
Ⅷ 「1962年」という、食文化の補助線/前川 健一
[連 載]
旅の記録と食(第1回)「異国への漂流」/山本 志乃
ユネスコ無形文化遺産を目指す「和食:日本人の伝統的な食文化」/編集部
東北食文化紀行(第2回)「ふるさと岩手が育んだ食の伝統」//林 恭子
大食軒酩酊の食文化(第20回)「モルディブ・フィッシュ」/石毛 直道
生業社会の食文化(第7回)「パプアニューギニア高地の食品成分表」/梅崎 昌裕
「食べる人たち」(第23回)「圧倒的な努力」で険しい山を登る ゲスト・見城 徹/聞き手・宇田川 悟
文献紹介 秋道智彌 著『漁撈の民族誌』/田和 正孝
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