
『vesta』85号
「はじまりの酒」
2012.01.10
責任編集 沼野 恭子(東京外国語大学教授)
その昔、人は身近にある果物や穀物で酒造りをはじめた。ブドウ、バナナ、蜂蜜、米、麦、サトウキビ、トウモロコシ・・・。
何世紀もの間、昔ながらの方法で丹念に作られてきた酒―それを「はじまりの酒」と呼ぶなら、「はじまりの酒」はいったいいつ、どこで、どのように作られ、どのように飲まれ、社会の中でどのような機能を果してきたのだろうか。
「はじまりの酒」は太古への郷愁を漂わせているだけではない。急速に進むグローバリゼーションへのアンチテーゼでもあり得るのだから。「はじまりの酒」を通して世界の酒文化について考えたい。
(巻頭言より)
伝統的酒造法の類型と分布 石毛直道
蜜酒は髪をつたわって流れてしまい・・・ロシア文化における蜜酒と馬乳酒 沼野恭子
ブラジルの国民酒カシャサとインディオの口嚼酒(くちがみしゅ)カウインの製造法 田所清克
アフリカの森の酒カシキシの魅力 山極寿一
ワインのふるさとから 児島康博・児島メデア
マルコポーロが飲んだヤシ酒 濱屋悦次
今日も飲まれている「はじまりのビール」 田村 功
四杯のマッコリ―韓国の濁酒の味わい方 太田心平
酒造り集団「杜氏」 小泉武夫
本格焼酎の楽しみ 江口まゆみ
海を渡った「はじまりの酒」―アメリカにおける日本酒の今 鈴木基子
〔レギュラー〕
狗肉の食とそのタブー(中)犬食い略史 山田仁史
大食軒酩酊の食文化14「ナガランドのライスビール」 石毛直道
寄稿「みをつくし料理帖」にみる美味しい時代小説の作り方 髙田 郁
食べる人たち17 「食べることは自分への挑戦」 ゲスト・松任谷正隆/聞き手・宇田川 悟
B級ご当地グルメの魅力4(最終回) 「祭典」 小林 哲
生業社会の食文化1 パプアニューギニア高地のサツマイモ食 梅崎昌裕
民話に見る食11 「笠地蔵ほか」 石井正己
文献紹介 黒木真理・塚本克己著『旅するウナギ』 赤嶺 淳