Washoku 「和食」文化の保護・継承活動の報告コーナー

和食文化"再考"シンポジウム『再発見!「和食」文化の魅力』【東海ブロック】編

2013年08月28日(水)

会場 アストプラザ アストホール
主催 農林水産省

全国9ヶ所で、農林水産省主催のシンポジウムが行われる。全国を9つのブロックにわけて、それぞれの地域の和食文化について学識者、料理研究家、食の担い手などからの講演と、若い方もまじえてディスカッションを行う。地域の食文化、和食の様々な形や背景、継承の工夫や課題を論じる。そのうちいくつかに参加して、各地域の食文化を学んでいきたい。
シンポジウムについての正式は紹介はこちら。

まずは三重県の津市で開催されたシンポジウムの参加報告から。

<プログラム>
挨拶
 山下容弘氏 東海農政局次長
基調講演
 「三重県の食生活と食文化」 大川吉峯氏(学校法人大川学園理事長、みえ食文化研究会)
事例発表①
 「東海地方の海里山の食文化を考える」 印南敏秀氏(愛知大学地域政策学部教授)
事例発表②
 「飛騨・高山地方に伝わる山里に育まれた豊かな食文化」 神出加代子氏(飛騨高山郷土料理・女性史研究家)
事例発表③
 「郷土料理の味を伝える、高校生レストラン」 村林新吾氏 三重県立相可高等学校 食物調理科教諭 専門調理師
パネルディスカッション
  上記4名プラス 岡本なつ実氏 佐野竜也氏 三重県立相可高等学校

REPORT

基調講演「三重県の食生活と食文化」 大川吉峯氏(学校法人大川学園理事長、みえ食文化研究会)
基調講演「三重県の食生活と食文化」 大川吉峯氏(学校法人大川学園理事長、みえ食文化研究会)

今年、遷宮を行う伊勢神宮が所在する三重県の食文化について講演された。

伊勢神宮の神饌に始まり宗教的な精神生活と食文化の関連性や、ナレずし、寿司など豊富な実例から魚の保存と食べ方を中心に三重県の食の豊かさに触れ、雑煮の餅の形態を取り上げ日本の東西の境界にあって食文化が入り混じっていることも示された。

事例発表①「東海地方の海里山の食文化を考える」 印南敏秀氏(愛知大学地域政策学部教授)
事例発表①
「東海地方の海里山の食文化を考える」 印南敏秀氏(愛知大学地域政策学部教授)

蜂の子など珍しい事例も含めて、東海地方の独自性と東西の文化が重層的に混ざる食文化の特徴と、資源供給の場である海里山の再生と食文化の継承における儀礼食の重要性について話された。

事例発表②「飛騨・高山地方に伝わる山里に育まれた豊かな食文化」 神出加代子氏(飛騨高山郷土料理・女性史研究家)
事例発表②
「飛騨・高山地方に伝わる山里に育まれた豊かな食文化」 神出加代子氏(飛騨高山郷土料理・女性史研究家)

「人余って食足らざる国」飛騨での厳しい環境の中で、雑穀利用などの工夫があり、高山の山のひだに張り付くような集落ごとに食文化があることや、ハレの食事の持ち帰りの習慣「ごっつぉ」と仏事のお斎は実例の写真も映し、女性の立場からの郷土の歴史と伝承料理の研究の成果の一端を示された。

事例発表③「郷土料理の味を伝える、高校生レストラン」 村林新吾氏 三重県立相可高等学校 食物調理科教諭 専門調理師
事例発表③
「郷土料理の味を伝える、高校生レストラン」 村林新吾氏 三重県立相可高等学校 食物調理科教諭 専門調理師

三重県多気町の高校生レストラン「まごの店」は三重県立相可高等学校の調理クラブの生徒が運営している。これを指導している先生のお話。生徒達はここで初めてだしを学ぶような状況であり、創作は大人になってからすべきで今は昔ながらの基本的な料理をしっかり作るよう指導しているが、生徒達は意外に知識は豊富で、むしろ戦後世代の大人達のほうが和食文化を知らないとの指摘があった。

パネルディスカッション 上記4名プラス 三重県立相可高等学校の生徒 岡本なつ実氏 佐野竜也氏
パネルディスカッション 上記4名プラス 三重県立相可高等学校の生徒 岡本なつ実氏 佐野竜也氏

現代は、食材や供給してくれる場に対する知識が乏しい、家庭料理の伝承を難しい、食が乱れているなどの課題が共有され、一方で相可高校の調理実習で包丁を見せて実際の調理を見せるとたいへんな興味を示すなど可能性もあげられた。和食文化の保護継承のヒントとして、食事に限らず記録に残らない日常の積み重ねと継承が大切であり、地域、先祖、歴史を思い起こすことも含めて家の年中行事を見直そうとの提言があった。相可高校で教える和食の基本的な技術は、野菜の切り方、煮方、だし巻き卵の作り方であるということと、飛騨高山での残りものを工夫して食べるような工夫の文化は、日本人としての感性の向上にもつながるという指摘が印象に残った。 <了>