
『vesta』103号
「カフェという別世界」
2016.07.10
特集アドバイザー 太田 心平(国立民族学博物館・准教授、アメリカ自然史博物館・上級研究員)
人はどうしてカフェに行くのか。
そんな疑問を私が初めて抱いたのは、小学生のころ、休日に祖母の家でのことだった。親戚の大人たちは、お茶やビールを片手に、散々おしゃべりに興じていた。なのに、2時間も経ったとき、「そろそろコーヒーでも飲みに行こう」と、みんなしてカフェに向かった。なぜ?
カフェが提供するのはコーヒーだけでない。気分転換、休息、勉強や仕事の場、出会い……。言うならば、カフェは適度な別世界も提供してくれるのだ。カフェの歴史や世界のカフェをひもとけば、我われが求める別世界がどういうものなのか、分かるだろう。場合によっては、実世界にどんな問題があるのかを垣間見ることも、出来るかもしれない。
巻頭:カフェのひととき/編集部
Ⅰ カフェの伝播と変容の歴史
1 カフェとは/太田 心平
2 (イギリス)コーヒー・ハウス -近代社会を生んだ空間/小林 章夫
3 「カフェ・ド・ラ・ペ」から覗いたフランスのカフェ史/山内 秀文
Ⅱ 世界各地のカフェ事情
1 バールという名のサロン ~イタリアの喫茶店~/宇田川 妙子
2 フィーカ コーヒーとともに暮らすスウェーデンの日常的空間/太田 美帆
3 (トルコ)コーヒーの家、紅茶の庭/Kemiksiz Asli
4 エチオピアの至福のひと時/村橋 勲
5 コーヒーに恋し始めた「チャイの国インド」/竹村 嘉晃
6 ベトナム・コーヒーに想いを馳せて/伊藤 まり子
7 (ブラジル)コーヒーを分かち合う/奥田 若菜
8 (キューバ)カフェ・クバーノ(café cubano)にまつわるお話/田沼 幸子
9 つねに何かが起きている場所-米国ニューヨークの猫カフェから/太田 心平
Ⅲ 日本のカフェ事情
1 近代日本の喫茶ビジネス略史/髙田 公理
<TOPIC>女子大生はカフェがお好き/松野 精
2 異彩を放つカフェ
1 大阪で2番目に安い喫茶店/宮下 良子
2 「出来事」を紡ぐ空間/大坪 茂人
<TOPIC>越境カフェ、境界に建つ茶館/石川 豪
<連載>
文明開化の食 『西洋料理通』と河鍋暁斎の記録から(第1回)/森枝 卓士
アメリカの食とは一体なんなのか(第3回)/東 理夫
「アメリカの食は、世界のそれとはまったく別物らしい」
<コラム>親切すぎる道具類
食からみるインド史 -中世から現代まで(第2回)
「中世インドの宮廷料理 『パーカダルパナ』と『アーイーニ・アクバリー』より」
/井坂 理穂、加納 和雄
再発見!日本の食-日本のくらしと食のしかけ(第6回)
「気象を見据えた標準設計の継承 長野県諏訪市の角寒天」
/文・二村 悟 写真・小野 吉彦
大食軒酩酊の食文化(第32回)「茶々汁」/石毛 直道
旅の記録と食(第13回)「馬琴が旅した上方」/山本 志乃
「食の文化研究助成事業」募集案内
文献紹介 山本志乃 著『行商列車 -<カンカン部隊>を追いかけて』/神崎 宣武