
『vesta』89号
「"おいしい"って何?」
2013.01.10
責任編集 高田公理
あらゆるメディアが、いわゆる「グルメ報道」に熱心である。しかし、たとえばテレビでタレントが「おいしいとされる料理」を食べたとき、少し目を細めて、「うーん、まろやか。おいしい」といった程度のセリフを吐くのがせいぜい。その表現は切ないほどに貧しい。では、「おいしい」とは一体、どういうことなのか。そこで、世界の「おいしい」を渉猟し、「おいしい」のあれこれ、「おいしい」のシステムに思いを馳せてみようと考えた。そこから「おいしい」の本質が見えてくるのかどうか。なんとか、その入口には到達できたように思う。
(巻頭言より)
世界の“おいしい"集合!
データにみる“おいしい"
Ⅰ 「おいしさ」のしくみ 伏木亨
Ⅱ おいしさ博覧会-国・民族ごとの“おいしい"
①ペーチ生まれの「フクースナ」(ロシア)/三浦良子
②イギリス人が大好きなのは、ジャガイモと肉(イギリス)/斎藤理子
③地元の味、記憶の味(イタリア)/中山エツコ
④中東地域の美味しさ(中東)/尾崎貴久子
⑤郷愁を誘う匂いのおいしさ(アフリカ)/小川了
⑥ターリーで最後に仕上げるインドのおいしさ(インド)/小磯千尋
⑦奥歯で噛みしめて味わう(南米)/石橋純
⑧フルーツの楽しみ(コロンビア)/武井秀夫
グレートジャーニーで見つけた私の“おいしい"/関野吉晴
Ⅲ “おいしい"のあれこれ
①ヒトだけが、なぜ“おいしさ"をかんじることができるのか/上野吉一
②タイ人の味覚は全方位である。しかも、強烈。/前川健一
③“スカッとさわやか"という記号/村瀬敬子
④味覚をめぐる「慣れ」と「飽き」/高田公理
Ⅳ “おいしい"システム
①懐石料理の魅力/赤堀博美
②フランス料理のおいしさ/山内秀文
③スッカラッはオモニの味/ジョンキョンファ
Ⅴ おいしさの表現
①映像と文学のなかの「おいしさ」/佐伯順子
②中国における「おいしさ」追求の軌跡/井波律子
③行為としての食事/原田美知子
Ⅵ “おいしい"って何? 高田公理
[連 載]
生業社会の食文化 第5回「クムはおふくろの味」/梅崎昌裕
食文化の現場から 第3回「納豆の旅」/大村次郷
大食軒酩酊の食文化 第18回「せんべい談」/石毛直道
「食べる人たち」 第21回「あふれ出る食への思い」/ゲスト よしもとばなな・聞き手 宇田川悟
医食同源の道草 第4回「薬材の“料理"」/真柳誠
書評コラム「ヒトは料理で進化した?『火の賜物』を巡って」/西澤治彦
文献紹介 原田信男著『なぜ生命は捧げられるのか 日本の動物供犠』/山田 仁史
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