『vesta』87号
「料理書を「料理」する ~世界のクックブック~」
2012.07.10
責任編集 東四柳 祥子(梅花女子大学 専任講師)
子供の頃の私は、母の書棚の料理書を手当り次第に眺める時間が何より大好きだった。想像を超えるセンスで彩りよくお皿に盛り付けられた料理に出会うたび、「このレシピに出会えてよかった」という、それはまるで人との出会いのような不思議な満足感をいつも感じたものだ。
かつては好事家的と揶揄されることもあった料理書研究も、ここ数年欧米を中心に活気を帯び始めている。人間の手によって紡がれる料理書には、無意識にその時代の空気を伝える面白さがある。本誌が料理書のそんな深遠な書物としての魅力を再発見するきっかけとなれば幸いです。
(巻頭言より)
明治の料理書に見る西洋料理レシピ 編集部
料理書が語るもの ~食文化資料としての「魅力おもしろさ」~ 東四柳祥子
日本の料理書文化史 中世から近世へ 江原絢子
近代から現代へ 東四柳 祥子
世界の料理書概史
1 フランス料理の黄金時代の料理書 八木尚子
2 イタリア料理を作り上げた料理書 柴野 均
3 「絵に描いた餅」は食べられない -ロシアの料理書の変遷 沼野恭子
4 イギリスにおける家庭向け料理書の誕生 -女性執筆者の活躍を中心に 東四柳祥子
5 『周礼』から生まれた満漢全席 横田文良
6 韓国初の近代的料理書『朝鮮料理製法』 守屋亜記子
7 中世イスラム王朝の宮廷料理書 -9世紀10世紀にアラビア語料理書が生まれた理由 尾崎貴久子
8 料理のるつぼ -アメリカの料理書にみる料理と女性 大岡響子
料理書コレクション探訪 21世紀型料理書革命 100文字レシピ 川津幸子
【参考】料理書研究の今現在 -文献リスト-
〔レギュラー〕
正倉院文書にみる小麦とその利用(上) 小西猛朗
食文化の現場から1 「カレー」 大村次郷
大食軒酩酊の食文化16 「食事時間」 石毛直道
食べる人たち19 『クリエイティブの基本「前提を疑え」』 ゲスト・佐藤可士和/聞き手・宇田川 悟
生業社会の食文化3 「食べる樹木 サゴ椰子」 梅崎昌裕
医食同源の道草2 「古代中国のスープベースと漢方処方」 真柳 誠
文献紹介 熊倉功夫/伏木亨監修『だしとは何か』 島田淳子