
『vesta』54号
「「文化としてのレストラン」」
2004.04.10
責任編集 武井 秀夫 (千葉大学教授)
表紙画:奥山民枝 ファストフードの店の拡大は著しい。
ハンバーガー、立食そば、牛丼、等々。
それに代わって、都心部ではゆっくりくつろげるような喫茶店は激減した。
ビジネス街の食堂の昼食時の混雑は、食べる方も食べさせる方も
いかに時間を使わないか、ひたすら競争しているように見える。
いわゆるパワーランチは時間節約の極である。
サラリーマン予備軍たちの学ぶ大学の昼食事情もまた混雑を極めている。
レストランは、食事だけでなく、「場」と「時間」も提供する。
なじみ客の場合、スタッフとの関係もまた提供されるものの一つになる。
客は客であると同時に、レストランが客の私的空間の一部にもなっていく。
そのときレストランは、食の持つ交歓性の展開の場となり、
それぞれの社会がはぐくんできた食の文化を如実に示す場となるのではないか。
そこには、経済に還元されない「外食」文化が見えてくるように思える。
(「特集によせて」より)
「わたしの」レストラン―その空間と文化― 武井秀夫
フランス人にとってのレストラン文化 宇田川 悟
日本における外食文化 山口貴久男
アメリカのファストフード文化 M.W.スティール
日本の飲食店に見る「なじみの店」① ごひいきの料亭 奥村彪生
日本の飲食店に見る「なじみの店」② ファミレス-『晴れの場』的利用から『日常』的存在へ― 浅川 明
日本の飲食店に見る「なじみの店」③ グルメ・レストランにおける日本人の「馴染み」感 高力美由紀
私のお気に入りのレストラン① 私をハッピーにしてくれるレストラン探し 大森由紀子
私のお気に入りのレストラン② 茶文化を味わうお点前遊びの茶房 徳永睦子
私のお気に入りのレストラン③ 1.3メートルのサービス 勝見洋一
〔レギュラー〕
カラー企画 世界の食の情景10・モンゴル 歴史を映し出す食生活 解説:小長谷有紀/写真:大村次郷
食卓の調味料(4)「芥子/マスタード」 吉田よし子
羊肉料理が伝えるイスラーム―中国に根づいた回族の食文化― 澤井充生
「ことばのゆれ」からみた日本の食②アメリカンドッグ~フレンチドッグ 塩田雄大
すこやかに生きる食文化② 春の薬膳 上野多恵子
エッセイ「遠ざかる料理」 脇田直枝
野生食をたずねて・11 穀物の先住民たち 小山修三・岡野洋子・落合雪野
文献紹介 ヨーロッパ食文化研究のために⑲
アレン・デヴィッドソン著 百科事典『食の友』 カタジーナ・チフィエルトカ
文献紹介 ブリュノ・ロリウー著『中世ヨーロッパ食の生活史』 北山晴一
取材 家庭の食の道具① 鰹節削り器 草野美保