『vesta』127号「食とジェンダー」

『vesta』127号

「食とジェンダー」

2022.07.12
特集アドバイザー 湯澤 規子(法政大学人間環境学部教授)

 新しい眼鏡をかけた時、風景の輪郭が鮮明になり、世界がまるでちがって見えてくることがある。 新しい概念を手に入れることは、この眼鏡の話によく似ている。漠とした何かが、概念の誕生によって可視化され、説明できるようになるからである。
 「ジェンダー(歴史・文化・社会的に形成される性差)」は、まさにそうした概念の一つであるが、人によっては未だ「遠い他人事」に過ぎないのかもしれない。ところが「食」という誰にとっても身近な事象と「ジェンダー」を掛け合わせてみると、それは「身近な自分事」に反転する。
 食卓や台所、会社の湯沸室、スーパーの店先、街角の居酒屋での出来事に見え隠れする「当たり前」や「普通」に対する再考を多彩に展開し、 新しい議論を試みたのが今回の企画である。複雑さの中に希望が宿る 「食」の風景に目を凝らしてみてほしい。
Ⅰ 「料理すること」と「食べること」、2つ合わせて考える
 1 女性は、料理上手でなければいけないのか?/阿古 真理
 2 よしながふみの描く食とジェンダーの多様性 ―『きのう何食べた?』と『大奥』
   /青山 友子
 3 日常茶飯史考 ―分担と共有の論理/湯澤 規子
 4 北欧の食とジェンダー平等/小野坂 優子
Ⅱ 「料理すること」
 1 『女学雑誌』にみる食とジェンダー/村瀬 敬子
 2 お茶くみ今昔物語/矢野 敬一
 3 家庭科教育の現場にみる食とジェンダー「ねばならない」!?/増田 真祐美
 4 ミクロネシア離島の食と暮らし/杉藤 重信
Ⅲ 「食べること」
 1 「女の一人飲みはタイヘン」と上から目線で語るおじさんへの伝言/稲垣 えみ子
 2 都市の食空間にみるジェンダー ―胃袋と生きることの日米比較史/湯澤 規子
 3 東南アジアの屋台リサーチでみてきたもの/下寺 孝典
 4 イタリアでも料理は女性の仕事か/宇田川 妙子
[トピックス]ヨモギを通して見るジェンダー化された食べ物/諸 昭喜
特集まとめ ジェンダーの多様性を映しだす食 ―名もなき日常に宿る新しい論点
      /湯澤 規子

<連載>

☆【新】台所史探訪(第1回)「台所史への誘い」/須崎 文代

☆歌舞伎のレシピ(第7回)「酒は憂いの玉箒」/堀越 一寿

☆大食軒酩酊の食文化(第57回)「カレーライスと酒」/石毛 直道

☆特別対談 石毛直道×池谷和信 世界のフィールドからみた人類の食

☆文献紹介 横山 智(編著)『世界の発酵食をフィールドワークする』/前川 健一

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