Symposium 公開講座

公開講座について

大学の講義形式で行われる比較的少人数(60~70名)の講座です。食に関連した旬のテーマや社会的関心の高いテーマを選び、その分野の専門家を講師に招いて開催します。講座は90分の講義と30分の質疑応答により構成されます。通常、講師作成資料が配布されるので、講義内容への理解が深まります。また、講師との距離感が近く、気軽に質問できるのも特長です。
※現在公開講座はお休みしています。

特別公開講座

味の素食の文化センター設立30周年記念特別公開講座「江戸の食文化~江戸に学ぶ食の楽しみ~」

2019年12月11日(水)12:45 ~ 14:30

テーマ 江戸の食文化~江戸に学ぶ食の楽しみ~
会場 東京會舘 ウィステリア
主催 公益財団法人 味の素食の文化センター
後援 一般社団法人 和食文化国民会議
認証 「日本博」参画プロジェクト
江戸の食文化~江戸に学ぶ食の楽しみ~

趣旨

日本における庶民の食文化が花開いたと言われる江戸時代、人々はどのように暮らし、食を楽しんでいたのでしょう。料理書や書物、歌舞伎や錦絵の中の食をひもとき、江戸の社会と創意工夫や遊び心にあふれた当時の食生活をたどります。豊かな江戸の食のなかに、現在の、そしてこれからのよりよい食生活へのヒントを見いだしていきます。

登壇者

原田信男氏(国士舘大学教授*(講演当時)*現 京都府立大学客員教授)
堀越一寿氏(歌舞伎大向弥生会・副会長)
林綾野氏(キュレイター・アートライター)

日本博

REPORT

基調講演
「江戸の料理文化とその展開」原田信男氏

和食は、江戸時代に完成し庶民の間に広がった。中世から近世にかけ、自由に料理が楽しまれるようになったのは、社会的に安定し米社会が成立して人々が豊かになるとともに、物流(街道・河川網)が整備され、商業資本が現れて諸産業が展開したことによる。そして、諸国の名産が全国各地にあふれ、人々は行楽や外食を楽しむようになった。料理屋の発達、料理書の出版、発酵調味料(醤油・味噌・酢)の大量生産が、自由な料理の展開をもたらした。社会の上層に限定されず、江戸では庶民でもお金を出せばいつでも誰でも料理を味わい、その知識・技術も含めて楽しめる時代になった。
当時の様子が描かれた錦絵や料理本など豊富な資料を紹介いただき、日本の料理文化発展における江戸の重要性と、江戸の人々が食を楽しむ姿までもが実感できました。

原田信男氏

この動画は音声が流れます。

講演1
「歌舞伎と見る江戸の食」堀越一寿氏

歌舞伎に登場する様々な食。時代が進み、服装など暮らしの習慣は変わっても、食は今の時代にもリアリティを感じられるもの。芝居では、食べものに対する台詞や食べ方でどんな人物かが表現されており、今と違う食習慣や食に関する価値観の変化も見て取れる。芝居に出てくる食への共感をきっかけに、より芝居に親しみを感じ、当時の人とのつながりを感じることができる。
歌舞伎の大向うとして精通する演目を細部まで案内いただき、鮮やかな語り口と巧みなイラストが印象的な講演でした。どんな演目にどのような食が登場するのか、舞台の上で食べる姿や台詞にも注目して歌舞伎を観に行きたくなりました。

堀越一寿氏

この動画は音声が流れます。

講演2
「江戸の味わいと錦絵の楽しみ」林綾野氏

絵を鑑賞するとき、日本画でも西洋絵画でも、季節を想像し、何をしているのか、ここはどこなのかを想像することによって、見えてくるものが変わってくる。当時の食文化を知った上で絵を見ることで、なぜその表情をしているのか、何が行われようとしているのか、静止画が動画に見えてくるような活き活きとした絵画体験ができる。食は、時代を経ても共通の感覚として絵と対峙するツールとなり、鑑賞を深めてくれる大きな可能性をもっている。
展覧会の企画・美術書の執筆などを手掛けるプロの立場から、どのように気持ちを込めて作品と向き合うかを実際の絵画や錦絵を用いて解説いただき、これからの絵の見方が変わってくるような気づきが得られる講演でした。

林綾野氏

公開講座では、料理本をもとに再現した江戸時代の寿司の試食も行われました。卵と海老の2種類、海老は車海老です。江戸時代には卵の方がより高価で、卵の寿司は車海老よりも高級品だったそうです。また、江戸時代の寿司は現在よりも大きく、1貫が車海老1匹分くらいありました。
寿司酢は当時使われていた赤酢を模して、甘酒を発酵したお酢を使用しました。江戸時代からの自然が残る皇居外苑の地で3年間貯蔵熟成してつくられたお酢のまろやかさで、とても柔らかい味わいの寿司になりました。

江戸のお寿司

会場では、講演に関連した錦絵と江戸時代の寿司を再現したレプリカ(いずれも味の素食の文化センター所蔵)が特別公開されました。

お寿司のレプリカ

講師について

原田信男(はらだのぶを)氏

国士舘大学教授*(講演当時)。日本文化論、日本生活文化史。史学博士。
食文化推進に関する私的懇談会委員、ウィーン大学客員教授、国際日本文化研究センター客員教授、放送大学客員教授などをつとめる。著書『江戸の料理史-料理本と料理屋』(中央公論社)、『歴史のなかの米と肉』(平凡社)など。(*現 京都府立大学客員教授)

堀越一寿(ほりこしかずひさ)氏

歌舞伎大向弥生会・副会長。歌舞伎の観劇数は年間100日以上、通算2500回を超える。歌舞伎の舞台に掛け声で声援を送る「大向う」の一人。人気ウェブサイト「All About」にて歌舞伎鑑賞法をガイドするなど、歌舞伎の普及活動も行っている。著書『歌舞伎四〇〇年の言葉 学ぶ・演じる・育てる』(芸術新聞社)、『大向うとゆく平成歌舞伎見物』(PHPエル新書・ペンネームの樽屋壽助名義)など。

林綾野(はやしあやの)氏

キュレイター・アートライター。美術館での展覧会企画、絵画鑑賞のワークショップ、美術書の企画や執筆を手がける。新しい美術作品との出会いを提案するために画家の芸術性と合わせてその人柄や生活環境、食への趣向などを研究。著書『画家の食卓』(講談社)、『浮世絵に見る江戸の食卓』(美術出版社)、『ぼくはフィンセント・ファン・ゴッホ』(講談社)など。

これまでの公開講座

これまで実施した公開講座の開催記録をご確認いただけます。

2015.11.07 第44回 宮中の食 ー戦後の昭和天皇とともにー 募集終了
2015.07.22 第43回 江戸の飲み物 ー庶民から将軍までー 募集終了
2015.06.06 第42回 日本の匂い ー発酵食品の知恵と文化を中心としてー 募集終了
2015.01.21 第41回 日本の食はモザイク模様  ー国内旅行が3倍楽しくなる食文化入門ー 開催報告
2014.12.13 第40回 日本の正月祝い膳 ー年神様と共食する「雑煮」を中心にー 開催報告
2014.07.08 第39回 食を通して韓国を知ろうーキムチとキムヂャンの伝統を未来へ 募集終了
2014.05.28 第38回 食を通してブラジルを知ろうー風土と多民族性が生んだ食彩の世界 募集終了
2014.01.18 第37回 昭和初期の軍隊の食事とそれが家庭の食生活に与えた影響 募集終了
2013.12.07 第36回 昭和初期の食事情と雑誌の役割―3種の雑誌を中心に 募集終了
2013.07.20 第35回 和食のユネスコ無形文化遺産化と農水省の食文化関連施策について 募集終了
2013.06.26 第34回 和食のユネスコ無形文化遺産化と農水省の食文化関連施策について 募集終了
2013.02.02 第33回 世界にひろがる日本食ーロスアンジェルスとNYの調査を通して 募集終了
2012.12.15 第32回 麺の文化史ー起源と伝播をめぐって 募集終了
2012.09.08 第31回 食を通してトルコを知ろう―伝統とノスタルジー 開催報告
2012.07.28 第30回 食を通してメキシコを知ろう―世界無形文化遺産の伝統料理 開催報告
2012.01.28 第29回 「時代小説『みをつくし料理帖』で味わう江戸の食 開催報告
2011.07.30 第28回 日本の食文化と献立の変遷 募集終了
2011.07.02 第27回 食を通してフランスを知ろう② フランス料理の食文化と社会、その裏と表 募集終了
2011.06.11 第26回 食を通してフランスを知ろう① フランスのお菓子文化とその実情 募集終了
2010.10.16 第25回 錦絵に見る江戸の食文化 江戸の料理屋とその周辺 募集終了
2010.10.09 第24回 錦絵に見る江戸の食文化 江戸の食材と料理 募集終了
2010.06.12 第23回 錦絵に見る江戸の食文化 グルメな江戸っ子の人気メニュー②「蒲焼」 募集終了
2010.05.22 第22回 錦絵に見る江戸の食文化 グルメな江戸っ子の人気メニュー①「天麩羅(てんぷら)」 募集終了
2009.10.03 第21回 食を写す!-カメラのファインダー越しにみた食文化- 募集終了
2009.06.20 第20回 極北-イヌイットの食文化- 募集終了
2009.05.30 第19回 私的東南アジア食文化論-激動の時代から現在までの食について- 募集終了
2008.12.06 第18回 「洋食」と日本のソース 募集終了
2008.11.29 第17回 明治期の家庭生活にみる「洋食」-料理書・日記を中心に- 募集終了
2008.10.18 第16回 横浜「洋食」事始め 募集終了
2008.04.04 第15回 シュガーアートでつくるカーネーション 募集終了
2007.12.15 第14回 お弁当づくりの中の知恵と工夫 募集終了
2007.11.10 第13回 お弁当―小さくて大きな玉手箱― 募集終了
2007.07.28 第12回 "食事学"のススメ―栄養素にふりまわされないために-- 募集終了
2007.06.23 第11回 江戸下級武士の食生活 募集終了
2007.03.03 第10回 生きている「食のことば」(vesta連動講座) 募集終了
2007.11.18 第9回 箸を使うということ 募集終了
2006.10.21 第8回 箸の端々―わたくしたちはこの二本棒とどう関わってきたか? 募集終了
2006.09.09 第7回 ALL ABOUT すし! 募集終了
2006.03.25 第6回 日本人とかつお② 募集終了
2006.03.11 第5回 日本人とかつお① 募集終了
2005.12.10 第4回 アイスクリームについて知ろう! 募集終了
2005.10.22 第3回 落語に見る江戸の食文化 募集終了
2005.08.27 第2回 戦時の食育・栄養・団体調理 ―雑誌『糧友』を通して 募集終了
2005.07.27 第1回 戦時の食 当時の出版物・記録等を通じて 募集終了
Google Arts&Culture
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Googleが運営するオンラインミュージアムサイトGoogle Arts & Culture に開設された当財団のページで、食に関する錦絵や、古典籍(江戸時代の書籍)を通じ食文化の面白さをわかりやすくご紹介しています。