1. ARCHIVES
  2. 魚醤とナレズシ

魚醤とナレズシ

1982.10-1985.8

漁礁とナレズシのアミノ酸およびアンモニア含量(平均値)

魚醤の成分

ーグルタミン酸によるうま味の多さが共通性ー

表●は、東南アジア,東アジア各地から集めた魚醤のサンプルを味の素中央研究所が分析した結果である。
特徴的なのは地域、魚の種類,魚醤の製造方法が異なるサンプルでありながらグルタミン酸、つまりうま味を与える物質が多いことである。
醤油と魚醤油の成分比較では,醤油は大豆と麹を原料としてつくるので、魚醤にない成分として糖分,種々の酸味、アルコールも生成されている。
これに対して魚醤は、独特の匂いは別として、うま味と塩味だけに特化した調味料であることがわかった。
また,小エビ塩辛ペーストと味噌の成分比較では、味噌は甘味や酸味やアルコールを含んだ複雑な味をしているのに対して、小エビ塩辛ペーストは塩味とグルタミン酸の多さが特徴的で,アミノ酸の全体量でも味噌より高いことがわかった。

図●は、ラングーンの市場の魚醤の売価とグルタミン酸含量の関係を表したものである。
最も高価なのは小エビ醤油であるBSSM1であり、一番安価な魚醤油であるBFSM3と比べると約8倍の価格である。
一口に魚醤といっても市場のものは値段にかなり幅があることがわかる。
作り方自体は同じだが、魚の良いところだけ取るのか、残り滓を使うのか,混ぜ物をしているかなどにより値段が異なる。
グルタミン酸量が多いものほど値段が高いことから、現地の人は魚醤のおいしさのもとであるうま味の量を舌で判別できている、といえる。

前の記事へ 次の記事へ