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魚醤とナレズシ

1982.10-1985.8

タイ
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魚醤、ナレズシとはなにか1

ー魚醤と塩蔵魚の違い、魚醤とナレズシの関係ー

魚に塩を加えて保存性を高めた食品には塩蔵魚もあるが、魚醤と塩蔵魚の違いは、発酵させるかしないかである。
塩蔵魚は、魚に塩をして発酵させずに姿のまま焼いたり煮たりするのに対して、魚醤は塩をした魚を長い期間おき、分解(発酵)させることを目的としてつくるものであり、通常は魚の原型をとどめない。

魚醤とナレズシの違いはと言えば、後者はご飯を入れること、魚はもとの丸のままの状態を保っている点である。
ナレズシは、米飯や粟飯など熱を加えたでんぷんを魚に加えて混ぜておいておき、炭水化物が乳酸発酵した状態となる。
魚が崩れることなく、長い間まるまる保存することが可能で、酸っぱくて塩辛い独特の風味をもつ食品となる。
日本ではかつては様々なナレズシをつくっていたが、今では琵琶湖でつくるナレズシが有名で、他の土地ではあまりつくられなくなりつつある。

琵琶湖のフナズシのつくり方を紹介する。
原料は子持ちのニゴロブナがよいとされ、4〜6月に漁獲したものを洗い、ウロコやエラを取り、卵以外の内蔵を取り出す。この時、卵を傷つけないようにする。
腹のなかに塩をつめ、木製の桶にフナと塩を交互につめて、落し蓋をして水があがったら重しをする。
塩の量は場所により異なるが、フナの重さの50%程度の例もある。
そして、7月の土用にかかる時期に本漬けをおこなう。
フナを水で洗い、塩ぬきをし、硬めに炊いたご飯と一緒に桶に漬けこむ。
その間空気を遮断して酸化を防ぐため、桶に塩水や淡水を張ることが多い。
小型のフナなら10月、普通の大きさなら正月には食べることができる。
食べるときはご飯をこそげとって原則食べずに、魚の肉だけを生で食べる。
東南アジアでも各地でナレズシが食べられており、主に淡水魚を原料とするが海産魚でつくるものもある。

琵琶湖のフナズシ
東北タイの市場で売られていたナレズシ「パー・ソム」。
大きい魚を用いる場合は切り身にする
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