1. ARCHIVES
  2. 中国食文化調査

中国食文化調査

1982.6-1983.3

広州

清平路自由市場

広州市清平路自由市場の道路の両側は何百軒もの露店がひしめいています。
市場の中心の十字路から四方に延びる道路ごとに商品の種類が異なっていて、農産物を売る道路、肉類を売る道路、漢方薬を売る道路、それに水産物と野生の動物を売る道路に分かれています。
野生動物を売る道ではハクビシン(ジャコウネコ科、山猫に似ている)や犬、キョン(小型の鹿)などが売られています。
犬を売る店は10軒以上あり、広州市内では犬を飼うことが禁じられているため、生きた犬は売っていません。
また、鶏仔蛋<カイツアイタン>という孵化寸前のニワトリの卵もあります。
内臓を取り出してから酒で煮るか、油で揚げて食べるといいます。
これらの食用を目的として売られている野生の動物や犬猫のたぐいを称して野味といいます。
広東の人々にとって野味は、薬効を求めて食べたり、野味の特別の風味を期待して食べたり、日常的な食事材料として取り入れられているものです。

淡泊でない広東料理

食は広州にあり、といわれます。
華僑の出身地である広州には、里帰りした華僑の宴会が行われる高級な広東料理店がいくつもあります。
中でも広州酒家<クオンチャウチウカ>は本格的な広東料理の宴席が供される有名店です。
メニューは片皮全乳猪<ピンペイチユンユチユ>(仔ブタの丸焼き)、牡丹紅扒生翅<モタンホンパツサンチ>(フカヒレの煮込みにカニの肚子をそえたもの)、百花煎醸鴨掌<パクフアチンナンアプチヤン>(アヒルの水かきにエビのすり身をつめた料理)、玉乳添香<ユクユテイムヒヤン>(小エビをミルクと卵白であえてから蒸してプディング状にしたもの)などです。
中国には「北鹹、東酸、西辣、南淡」ということばがあります。
北京や山東(北方)の料理は塩からく、江蘇や浙江(東方)の料理は酸っぱく、西方の四川料理は辛く、南方の広東料理はあっさりしている、という中国を代表する四大料理の特徴を説明する文句です。
ただし「淡」という文字には「あわい」や「あっさりしている」という日本語訳では説明しきれない内容が含まれています。
広東料理は、日本の懐石料理のような、肉や油気のない薄味料理ではありません。
肉も脂肪もたっぷり使っているのですが、調和のとれたまろやかさがあります。
強烈で刺激的な味付けをせず、材料の持ち味を生かすことにおいて「淡」と表現されているのです。

飲茶

飲茶<ヤムツア>とは文字通り、「茶を飲む」ことですが、広東では茶を飲みながら点心類をつまんで軽い食事をとることも意味します。 街に住む広東人は朝食を飲茶の店で済ます人が多く、朝の仕事前に一家そろって飲茶の店を訪れたりします。 点心のおいしい店として有名な?溪酒家<プンカイチウカ>は、朝、昼、晩と飲茶を供しています。 一盅両件<ヤツチユンレンキン>といって、お茶(盅は急須のこと)を注文して2種の点心で朝食を済ませる人が多いそうです。 飲茶の主流である点心類は直径15センチくらいの小さなセイロに入った蒸し料理や小皿に入れた料理が多く、ほとんどの料理が一口大の大きさで、三口くらいで皿があくようになっているためさまざまな料理を楽しむことができます。

売り子たちは、料理を入れた箱を駅弁売りのように肩からぶら下げたり、ワゴンにのせてまわってきます。 茶がなくなったら、急須の蓋をずらしておくと、それが湯を注いでほしいというサインになり、黙っていても熱湯が注ぎ足されます。 広州では、特別に注文をしない限り、紅茶が出されます。 また、サービスをしてもらったとき、「ありがとう」と声を発するかわりに指先でテーブルをコツコツと叩けばそれが感謝の意味をあらわす合図とされているので、あちこちからテーブルを叩く音が聞こえてきます。

前の記事へ