⼤⽇本物産図会
三代目歌川広重
横中判錦絵一一八枚 大倉孫兵衛版
明治10年(1877年)・明治14年(1881年)
明治10年(1877年)、東京上野公園で開催された「第一回内国勧業博覧会」、および明治14年(1881年)、同所にて開催された「第二回内国勧業博覧会」に出品された錦絵がこの『大日本物産図会』である。
日本諸国の名産品の生産工程がわかるような錦絵を、三代目歌川廣重こと安藤徳兵衛が絵筆をとり、東京日本橋一丁目の錦絵問屋大倉孫兵衛が板元となって制作された。
この博覧会出品の後、大倉孫兵衛より広く『大日本物産図会』が市販されていることは、同版元の草双紙に載る広告からも確認できる。
『大日本物産図会』については、樋口弘編著『幕末明治開化期の錦絵版画』(味燈書屋、昭和18年)所載「三代廣重作品略目」に「大日本物産図会 大錦竪二図入、六十枚」と記され、上下二図として全120点がその総数と記されているが、全体を確認しえない。現状、味の素食の文化センター(以下、当センター)所蔵の118枚が最大数といえる。
当センター所蔵のものには、雲母摺りの施された錦絵も数多く確認でき、摺りの精緻さを考えても雲母摺りの方が初印に近いものと考えられよう。
多くが食品加工の当時における実態を示す錦絵であり貴重な資料だろう。
端詞に記された内容は、『養蚕秘録』(1803年)や『日本山海名産図会』(1799年)などを参照していることが確認されるが、その全貌はまだ十分検証されておらず、今後の研究の余地を残している。
解説:山本和明( 国文学研究資料館・教授 ) 執筆年:2024年