公共財団法人 味の素食の文化センター

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東京料理十八肴 今戸 有明楼

  • 絵師:落合 芳幾おちあい よしいく
  • 落款:一恵斎芳幾筆
  • 時代:明治4年3月(極印)
  • 判・種類:大判錦絵
  • 版元:木屋宗次郎(「馬喰四/木屋板」)、彫師「彫工栄」

解説

障子ごしに見える客人に、徳利から酒をつぐ若い女中は有明楼きん、立ち姿で簪を直しているのは芸妓の湊屋貫六。今戸橋傍らの料亭有明楼の一齣である。西洋風の座敷で牡丹模様の絨毯の上にテーブルが配置されているにもかかわらず、馴れない客人は、床に座り、女中から酌を受けている。杯洗とたばこ盆の傍らにある取り肴には鮪の刺身と香の物などが添えられる。山々亭有人の詞書に「横文字の手ぬぐひに調理の文明なるをあらはし、西洋風の座敷には交際の広きをぞ思はる。されば太神楽の鞠にはづみ、平坊の手振に渇歩なる客此楼に絶ずして、左右に眺むる不二、筑波。向ふに見なす堤の花。娯楽延齢おのづから菊といふ名も空しかるまじ。 山々亭有人記」とある。有明楼は、安政大地震で潰れた料亭玉庄(金波楼)跡に、安政三年に堀の芸者お菊によって開業し、豪興の士も風流の客も、この楼閣に遊ばぬものはない(成島柳北『柳橋新誌』)とされた料亭。「菊といふ名も空しかるまじ」とあるのは、この女主人のことを指す。小林清親「今戸有明楼之景」(東京名所図絵)にその全景が描かれる。

執筆者:宮本祐規子

執筆年:令和2(2020)年

管理No.:145

関連タグ:
料理・調理・料理屋・食事・宴会
料亭