公共財団法人 味の素食の文化センター

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東都名所之内 高輪廿六夜之図

  • 絵師:初代歌川広重
  • 落款:広重画
  • 時代:天保後期(1840前後)か。
  • 判・種類:横間判よこあいばん錦絵
  • 版元:江戸・佐野屋喜兵衛

解説

高輪の海辺で、月の出を拝する二十六夜待をして賑わう様子が描かれている。二十六夜待やまちは、正月と7月の26日の夜半に月の出を拝むと、月光の中に阿弥陀、観音、勢至の三尊が姿を現し、それを拝むと幸運を得ると言われていた。正月は寒いので、7月の方が盛んであった。陰暦7月26日は現在の9月上旬にあたる。『東都歳時記』の七月廿六日の項に、「廿六夜待ヤマチ 高きに登り、又は海川の辺酒楼等に於て月の出を待つ。左に記せる地は、分て群集する事夥しく、宵より賑へり。芝高輪・品川 此両所を今夜盛観の第一とす。江府の良賤兼日より約し置て、品川高輪の海亭に宴を儲け、歌舞吹弾の業を催するが故、都下の歌妓幇間女伶のタグヒ群をなしてこの地に集ふ。或は船をうかべて飲食するものすくなからずして、絃歌水陸に喧し。...」とある。また『江戸名所図会』巻一に「高輪海辺 七月二十六夜待」の図が描かれ、『絵本江戸土産』「高輪の光景」にも「廿六夜待」が描かれる。どちらの図も、高輪の海岸沿いの料理茶屋で軒に提灯を点している所に多くの客が集まり、中では人々が茶菓酒肴を楽しむのみならず、鳴物手踊、にわか、講釈落語等を月が出るまで催す様子が描かれる。海辺には掛茶屋が並び、同様に軒には提灯を点じて、多くの客がそこでくつろぎ賑わう様子が描かれている。本図には掛茶屋の傍にいくつもの屋台店が出ており、すしや果物なども売られている。

執筆者:山下則子

執筆年:平成30年(2018)

管理No.:144

関連タグ:
料理・調理・料理屋・食事・宴会
屋台