第2部食育・学校給食の課題と今後の方向性について フランスの味覚教育に学ぶ家庭科学習

2014年03月03日(月)

講師: 佐藤 雅子

REPORT

佐藤 雅子 氏
千葉大学教育学部附属小学校教諭
 

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 フランスの味覚教育は、1974年にジャック・ピュイゼ氏が子どもたちを取り巻く食の乱れに危機感を抱いたことをきっかけとして提唱したものです。ピュイゼ先生の提唱した本来の味覚教育を発展させる目的で、2012年にフランス味覚教育協会が設立されました。
 味覚教育の狙いは「食べるという行為の主体者が何を食べているのかを認識し、食べるものを選択したり、選択肢を広げたりする力、すなわち、自分の食をつくり上げる力の育成」です。そして、それには感覚を活用することが重要だと言われています。ピュイゼ理論において大切なことは、自分が感じたことを自分で分析し、自分がどう感じているのかを判断することで、感じたことの成否や是非を判断するものではないということです。
 味覚教育の方法の例を示します。例えば、ここに示した色(※青色のグラデーション)を見て何をイメージしますか。また、どんな季節を思い浮かべますか。この色から氷の色をイメージした方は冬。抜けるような空の色をイメージした方は夏など、経験によってイメージさせることが違ってきます。このように、自分がどう感じているのかということを大切にし、言語化することで、感じたことの認識を深め互いに伝え合っていきます。
 では、日本における取り組みを紹介します。私は小学校家庭科の調理学習に取り入れてきました。最初に糖分が同量で、色と香りを添加したヨーグルトを味わわせます。子どもたちは、視覚や嗅覚を使って味わいますが、3種のヨーグルトの中で、赤色や緑色のものの甘味を、黄色で酸味を強く感じています。そして、色と香りで甘味や酸味が違うことを実感し、五感を意識するようになります。また、感じ方が人によって違うことを認識し、自分がどう感じているのかに向き合うようになります。このエクササイズを踏まえて、調理学習につなげています。最初にゆで方を変えたほうれん草の食べ比べを行います。子どもたちは、ここで自分がおいしいとする目標のかたさを認識します。そして、目標としたかたさにゆでるために、加熱温度や時間を意識して、1人調理でゆで、おいしくゆでられた達成感を得ます。このゆでる技能を使い、次におひたしやあえものをつくる学習を行います。ここでは、ほうれん草以外に小松菜やキャベツなどの葉菜をゆでたり、調味を行ったりしてごまあえや酢みそあえなどの料理をつくります。
 この味覚教育を取り入れた学習を終えた児童の感想を紹介します。「食べるというのは、ものや心、人、環境もかかわってくるんだなと思いました。みんなで一緒に食べると食べ物がおいしく感じられるんだなと思いました。これからは、食べるということへのありがたみを持って食事をしたいし、自分も家族につくっておいしく食べてもらいたいなと思いました。」このような感想を得られることが、家庭科の中に取り入れた成果になってくるのではないかなと思います。
 
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