鰹節発祥の地、印南町を訪ねて その7

2013年08月22日(木)

REPORT

訪問3日目

 

 

「印南町の和食文化を考える・意見交換会

~和食のユネスコ無形文化遺産化活動について知る~」

〈5〉全体意見交換・感想

 

 

全体の意見交換の準備をする間、食の文化センターからのお土産の錦絵絵はがきについて、飯田さんから解説。髙田先生が例に出された3点のほか、「夜商内六夏撰(水売り)」「名所江戸百景 びくにはし雪中」「木曾街道六十九次之内 守山 達磨大師」の3点。それぞれの絵の読み解きも交えて。

 

◆参加者全員が感想・意見を語る

 

最終セッションの司会は坂下さん。「ざっくばらんに、ということで、皆さん一言ずつ感想を言っていきましょう」と、前列端からどんどん指名(発表者はパスです)。

社会福祉協議会のヘルパー・古居さん「印南で生まれ育っていても知らなかったことを教えてもらった」、同じく片山さん「和食の大切さを知った。食事作りでは和食が多いので、これからも勉強して作っていきたい」。

食生活改善推進協議会の太田さん「印南に嫁いで36年になるが知らないことばかり」、同じく中畑さん「町外から嫁いで鰹節の話も初めて。同居の孫にはなるべく旬のものを食べさせるようにしている。畑の野菜を一緒に取りに行ったり。おばあちゃんのご飯の方が美味しいとほめてくれる」(これはすごいぞ!)。

農業関係の小田さん「いいお話を聞いた。10月には『見つめ直そう食文化の伝承料理を』ということで味交換会をする予定」、鯖鮨関連の稲田さん「一つ教えてほしい。ご飯を炊く時、昆布はしばらく浸けておく方がいいか、すぐ炊いた方がいいか」、髙田先生「浸けておく方がだしが出ていい。昆布は沸騰すると粘りけが出るので取ってもいい。私は入れて炊くがそれも美味しい」。

ワサビの平井さんのお父さん「ワサビについては加工品を36種類ほど(試作)、皆さんに食べてもらって、これからもやっていきたい」。

 

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続いて、シニア学園の道さん「的場先生に。京料理の真髄や『食べたくなる食事』『一手間かけてより美味しく』という話を聞いた。自分も料理が好きで作るし、公民館でも教室がある。でも、同じ料理でも料亭で食べると美味しい。一度京都に連れて行っていただいて…」(笑い)、「もちろんOKです」と的場先生、「京都の料理人が何に一番力を入れているか。『見た目』。見た瞬間に美しい、食べたいと思わせなければ失格。彩りが大事と言ったが、まずそれが『つかみ』」。重ねて道さん「うま味が下味とは?」、的場先生「だしのベースの味はうま味ということ」、道さん「多すぎたら?」、的場先生「少ないとまずいが多くても大丈夫。でも必要以上に多くすることはない」、道さん「美味しいものを食べると舌の上に甦ってくる?」、的場先生「うま味は舌の上に残って美味しさを持続させる。それが日本料理の味の特徴と世界でも認められている」、道さん「ぜひその機会を」的場先生「ぜひ」。ここでやりとり終了。的場先生の美味しい話に道さん、つかまれたんだなあ。

「よかったですね。またみんなで押しかけて行きましょう」と坂下さんが引き取って次へ。

 

学校給食関係の蕨野さん「印南の文化や和食について、新しい情報がもらえてよかった」、同じく宮本さん「自分も五十過ぎてから煮物を美味しく感じるようになり、和食はいいなと。普段は手軽なだしの素を使うが、本格的に昆布や鰹節でだしをとり美味しい物を作りたいと思った」、同じく西さん「活動事例発表、印南町のよさを全面的に出してもらい、熱い想いが心に響いた。ワサビがあそこまで被害があったのも知らなかった。栄養士なので、食育活動でも伝えていけたら」。

今度は文化協会の笹野(久代)さん「昨日(見学会)から参加し、印南に嫁いで50年になるが、醬油を絞るのも、真妻のワサビ田も初めてで、感動した」。

坂下さん「地元の方たちも意外に知らないと、見学に参加された。ダルマ醬油さんでは、先生方は時間が過ぎても外に出てこないくらい夢中になった。実は、ダルマ醬油の当主の久保田さんは角屋13代目の子孫です。しゃべらんでもいいから立って」と久保田さんを紹介。

続いて文化協会事務局長の朝間さん「会長(坂下さん)の後ろをついてあちこち行ってます。今日はありがとうございます」、坂下さん「土佐、枕崎、千葉、伊豆、全部ご一緒していただいている。そういう仲間がいるから心強く思っている」。

 

坂下さん「昨日行ったおたきさん、どなたもいなかったので、勝手にお詣りしました。その瀧法寺の奥さんの西山さん」と促され、「山寺の方にこもっていたので。今日は、聞くこと珍しいことばかりで、こういう機会に感謝」と。「おたきさん」もかなり山奥、その山寺ってどんなところだろう。

次に商工会女性部のダブル楠本さんがお一人ずつ。楠本(裕子)さん「私の言いたいこと聞きたいこともう言ってもらっている。お昼もただでいただいて」(笑い)、楠本(公子)さん「印南で生まれて、ほとんど見てきている。祭りのお鮨や焼き鯖のまぜご飯は、おふくろの味を思い出して嬉しかった」。

順番が回って、ダルマ醬油の久保田さん「今日は何もしゃべらんでいいからと言われてて、いい話やなあと黙って聞いてたんだけど、最後に一言となっちゃった。昨日はどうもありがとうございます。23名は新記録。85歳の母親はここも、あそこも掃除せんといかんとパニックになって。今度来るときは2、3人で。そしたら何でもお話できますし。やっぱりしゃべることになりました」と。とても、シャイな方なんだ。

 

文化協会の会計担当の笹野(操)さん「今日は的場先生のだしの話もそうやと思ったし、髙田先生の錦絵の意味をさぐる話も面白くて、これからは意味も考えながら見ていきたい。真妻ワサビの話も、何も知らないことでとても参考になった」、同じく事務局の鳴神さん「先生の後についていくのがフーフー。でも、何かイベントを起こすときは必ず先生の勉強する力に感じ入る。傍で見ていて賢くなりたいと思いながらこの年になったが、まだまだついていって勉強したい」と坂下さんに熱いエール、そのまま続けて「ワサビの葉は天ぷら? 軸は佃煮?」と質問、答えて平井(満)さん「いろいろ36種類ありますから」(笑い)、「また産品で美味を楽しみたい」。坂下さん「本当に事務局がバックアップしてくれるので活動できる」と。

今度は、日高漁協関係の上山さん「髙田先生の優しい笑顔とお話に癒されました」、同じく岡本さん「昨日と今日、2日間たいへんありがとうございました」。これでいちおう一通り、参加者の一言が終わった。

 

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後ろの列のオブザーバー参加の方は代表して一人、感想を。立ち上がった皆さんは印南町の小学校4校、中学4校の給食調理人さん。昨日今日と急に無理を言って参加したという。その感謝を言われた後、「普段何気なく使っているものが、こんなに手間ひま掛かっていることを思い知らされた。真妻のワサビ園も昨日初めて行って感激した。こういう機会があったらまた声をかけてください」と。

(この皆さんが、手間を惜しまず、協力してくれて、子どもたちへの食育や、行事食の伝承などの実践力になってくれているんだと、飛び込みでも勉強したい、知りたいという思いに、こちらも感激です。)

坂下さんは、同じく後ろの列で座っていらしたワサビの平井さんのお母さんを、「こんな息子さんを育ててくれた方」と紹介。また、新聞を見て駆けつけた方、髙田先生の小説ファンの方がいらしたことも。

 

「ここで、今度は先生方のほうから、何か問いかけや感想など」と坂下さんが水をむける。

髙田先生「ちょっと質問。お隣の的場先生が大のお揚げ好きで、昨日Aコープへ行ったらお揚げが三角だった。ここでは三角が普通?」、坂下さん「四角は最近あるが、印南はほとんど昔から三角」、髙田先生「関西も稲荷寿司を作る時は三角だけど、それは真四角な揚げを半分に切る。Aコープに売っている揚げは二等辺でなくいびつだったよ」。「誰か答えられる人」と坂下さん。豆腐屋さんだったという笹野さんが促されて、「うちのおばあさんが作っていた時、揚げは三角。四角の揚げは全然知りません。稲荷にする時はその三角を半分に切ればやっぱり三角になる」、「そうか! なるほど。生まれて初めてだったので、思わず買って帰ろうかと思ったくらい」と髙田先生も納得。

 

的場先生「鰹節のことをもっと知りたい。昨日のバスで、鯖節みたいなものを作っていたという話もあったし、ここでまだ作っている何かがあればいいなと。それから今井さんが言った、お母さんの鰹節のことも聞きたい。ここで作っていた?」、今井さん「ここでカツオから選んで、田辺の方の鰹節屋さんへ持っていったらしい。でもカチカチのではない」。的場先生「燻製している? 荒節くらい?」、今井さん「荒節との中間くらい」。的場先生「昨日の鯖節は、湯がいて天日で干し、それをだしに使ったと。その田辺の鰹節の作り方はどんなものやったかなと。鰹節を作っていた痕跡が田辺にあれば、それでもいいかなと」。

会場の声「ソウダガツオのは? 今はしてないけど、蒸して天日で干して。今井さんのとこがうどん屋をしていた時それを使っていたのでは?」「個人的にはソウダガツオの頭を取って、蒸し上がったら火にかける。そうすると日持ちする」、的場先生「焼くの?」「はい。焼き鰹にする。そうするとまた芳ばしくて美味しいですよ。だしにもなりますし」。坂下さんが「かつて今井さんの近くに丸田さんという節を作って干しているところがあって、その道具が印南の郷土館に少し残っているくらいしかない」と語り、「ありがとう」と的場先生の鰹節探求も一応終わりに。

 

続いては、鈴木専務理事から、ユネスコ無形文化遺産化についての解説。まず、農水省作成の赤いパンフをわかりやすいと紹介し、申請に至るまでの経緯を簡単に述べ、検討委員会の討議でまとめられた「和食」とは何か、その概念を再びパンフを引きつつ語る。「多様で新鮮な食材を使う」「バランスよく健康的な食生活」「季節の美しさを表現」「年中行事とのかかわり」と4つの特徴を挙げ、「それだったら印南の食も、と思い当たるのではないか」と問いかける。また、ユネスコ無形文化遺産に登録された他の国の食の事例や、先の世界文化遺産に登録された富士山との違いなどから、無形文化遺産そのものについても解説した(近くの登録事例として那智の田楽などをあげて)。

やはり、世界遺産に比べて概念もつかみにくいし、とっつきにくいところもあるなあ。でも、印南で見て聞いて、体験した食は、まさに「和食」(自然を尊ぶ日本人の気質に基づく食の慣習)そのものだった。

 

◆印南への熱いエールを送って閉会

 

ふたたび先生方から。

髙田先生は、質問はもうないがと断って、「私も的場先生も、ものすごく皆さんに感謝しています。一般の市民の人の生の声を聞く機会は逆に全然ないんです。でも今日みなさんのお話が本当に楽しくて、誠実で、聞いていてすごく胸を打たれました。ほんとうにありがとうございました」

的場先生にマイクが渡り、「正直よくわからずに来たが(笑い)、一日で変わった。鰹節を中心にした歴史の話を聞いて印南の人々の進取の気質を知り、海の向こうを眺めて志大きく、広いゆったりした地域の人と思った。ワサビの話にも、技術の革新、進取の気性があり、心に残った。こんなに地域の食について、のびのびと話される機会は初めて。それだけ皆さんは何かを持っている。行事についても一致して楽しみ、地域のためにやるというコミュニケーションができる町づくり。『いい日本がまだここにはある』と、日本人として大変うれしい。子どもたちにどう伝えるか、給食を担当される方に―食は命の原点であり、人間のコミュニケーションをつくる原点。ぜひ、このまま、明るくなごやかに、ゆったりと、誇りを持って、頑張って欲しい。本当によかったです」。思いがあふれ出るように、的場先生の言葉がほとばしり、こちらも胸を揺さぶられる。

鈴木専務理事「一昨日から印南に入り、印定寺でのお話、醬油絞り、真妻ワサビの見学、寺社や史跡をめぐり、今日の勉強会となった。一番強く感じたのは、印南町の皆さんが『文化』について大変深い関心をおもちだということ(もちろん食文化にも)。私どもは主催者という立場できているが、そういう機能は必要とされないくらい充実した活動をされている地域なのだと強く感じた。こういう活動が続けられていくと和食が、結果としてユネスコ無形文化遺産になれるのではないか。なるならないは関係なく、今後もこの食文化の継承活動を続けていただきたい。今回は本当にお世話になりました」

(大きな拍手)

 

坂下さんから、「先生方の魚の食べ方が素晴らしくきれいだった」とお褒めをいただき、「みんなでやればまだまだ印南を盛り上げられる。今日はその第一陣。和食についての交流会もこの機会を無駄にしないよう皆さんに呼びかけていきたい」とまとめの挨拶。先生方への拍手がやむと、今度は髙田先生の音頭で坂下さんへの大きな拍手。参加者で集合写真を撮って、印南の旅は締めくくられた。(了)

 

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