食の文化シンポジウム2013 「和食の力:だし・うま味」―無形文化遺産を目指す"和食"・震災復興の現場にみるその力―

2013年03月10日(日)

会場品川グース
参加人数220名
主催財団法人 味の素食の文化センター
後援農林水産省
協賛味の素株式会社

REPORT

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「和食のちからを信じたい」
(ユネスコ無形文化遺産登録をめざして)

 

 2013年3月10日(日)、春まだ浅い東京・品川で、食の文化シンポジウムが開かれた。題して「和食の力:だし・うま味」。サブタイトルに「無形文化遺産登録を目指す“和食”・震災復興の現場にみるその力」とある。
 それに先立つ1月、味の素食の文化センター(以下、センター)から今回のシンポの案内をいただいた。いつものシンポの時期とはちがうな、と思ってチラシを見る。「“和食”が無形文化遺産を目指すって何?」。かなり長いこと食関係のことに携わったり、ウオッチャーを自認してきたんだけれど、「これって聞いてないよ~」。自らの不明を恥じて、さっそくシンポジウムへの参加を申し込んだ。
 

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 会場は参加者であふれていた。今、日本の食が海外で注目されていることも反映してか、若い学生さんから食関係の仕事に従事される方、ジャーナリストや研究者など約200名。「みんな、この文化遺産登録の話、知っていたんだろうか」。自分の不勉強を棚に上げ周りを見回してみた。
 
 センターの山口範雄理事長の主催者挨拶に続いて、メインプレゼンターのお一人、熊倉功夫先生が登壇。演題はずばり「ユネスコ無形文化遺産に申請された和食」だ。熊倉先生は、今回のユネスコ登録に向けた活動の中心人物で、推進協議会(正式名称「日本食文化のユネスコの無形文化遺産化推進協議会」のまとめ役である。先生はそもそもの経緯から語りだされた。ユネスコに対し、具体的な申請が出されたのが1年前の3月。そのちょうど1年前、3月11日の東日本大震災により東北を中心に大きな悲劇に見舞われ、その復興の過程で我々の食というものをもう一度考え直す機会となったこと。折しも前年の2010年に、ユネスコの無形文化遺産に初めて「食」分野のもの(フランスの美食術や地中海料理など)が登録され、日本も目指そう、との機運が高まった。日本人の自信と誇りを確認しよう、との思いがあったのだろう。海外で大変な流行となりながら、お膝元の日本では伝統的な食文化が崩れているとの危機感もあったという。そして、地域文化的登録ではなく、日本人全体がハッピーに思えるような登録をとの発議で「和食(WASHOKU)」として「フランス方式」を目指すことになったのだと。
 以降、和食の定義を検討し、苦労して申請提案書が作成された由。
 また、つい日本の食素材の海外輸出や観光誘致など、「ご商売」に結びつけて考えてしまわれがちだが、この商業主義はユネスコの精神とは相容れず、徹底して排さなければならない、と強調された。

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 文化史の専門家である熊倉先生が、日本の食様式の基本形は「めし+汁+菜(おかず)+漬物」、特徴であるおいしさは何かと追求すれば「うま味」に行き着き、それは800年前から日本人が認識し、以来磨き続けてきたものだと語られると至極納得。「UMAMI」が世界語となったように、「WASHOKU」も世界に羽ばたかせたい。すなおにそんな気になった。
 続いて登壇されたのが山田チカラ氏。いまや伝説となったスペインの名店「エルブリ」でフェラン・アドリアに師事し、現在は東京で創作料理の店をされている。「だしとうま味、その力と魅力」と題し、ご自分の料理におけるだしの活用や素材との向き合い方について語られた。エルブリの世界最先端料理の技法を学ばれた方が、日本のだしやうま味に魅了されている。これって究極? 日本の伝統のちから恐るべし。
 

 

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 休憩をはさみパネルディスカッション「和食のもつ力とその伝承」。このセッションは、一気に食を通じての復興支援がメインテーマになった。パネリストは、被災地・南相馬で市民の健康づくりに取り組む栄養士さん、岩手県立大学・学生ボランティアセンター代表の方、味の素(株)CSR部で復興支援を担当する前原部長、食育専門家として、医学博士で管理栄養士の本多京子さん。短い時間ながら、それぞれの方が現場での実践を強い思いで報告し、活発な議論となった(熊倉先生の司会はいつも通りお上手)。
 このパネルディスカッションが、ユネスコの無形文化遺産そのものとどう結びつくのか、正直なところしっくり来たとは言えない。でも、食の力というか、一緒につくって共に食べることがコミュニケーションそのものだし、何よりおいしいは楽しい。元気が出る。それが、被災地の方々が起ち上がろうとするとき、すごく力になっているのだと実感。それはすごいことだ。
 家に戻っていただいた資料の中から『わたしたちにできること』という小冊子を手にとった。真剣に料理し笑って食べる顔、顔、顔。人の輪の真ん中に「食」がある。さっき話を聞いた前原部長の声が甦って、すこし胸が熱くなった。