世界お茶祭り2013和食文化推進シンポジウム         「料理・酒・茶」~「和食文化」を次世代に伝えるには~

2013年11月08日(金)

会場静岡県コンベンションアーツセンター(グランシップ)
主催静岡県

シンポジウム開催の趣旨は以下のとおり。
「和食;日本人の伝統的な食文化」が、本年12月にユネスコ無形文化遺産に登録される見込みで、和食を再評価する動きが全国的に高まってきている。静岡県は、多様な農林水産物を生産しており、米や茶、まぐろやしらす干しなどの和食食材の全国有数の消費地であり、日本型食生活が日常に浸透している県である。こうした和食文化を今後さらに推進し、食育活動を通じて次世代に伝えていく方法を考える。開催チラシ 

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<プログラム>
主催者挨拶    静岡県経済産業部理事 大谷徳生
基調講演
  「『茶の都しずおか』づくりについて」
           中村羊一郎氏(静岡産業大学総合研究所客員研究員)
鼎談
  「『料理・酒・茶』~『和食文化』を次世代に伝えるには~」
           熊倉功夫氏(静岡文化芸術大学学長、「和食」文化の保護・継承国民会議会長)
           田村吉弘氏(日本料理「つきぢ田村」三代目)
           後藤加寿子氏(料理研究家)

せっかくなので、お茶まつりの模様を写真中心に報告しよう。
静岡県主催の世界お茶まつり。
3年ごとの開催で今年で5回目、産業・文化・学術をテーマに11月7日から4日間にわたり開催され10万人以上が訪れる。静岡県の10階建てのコンベンションセンター「グランシップ」立派な施設だが、ほぼ全館を使って開催される。世界の珍しいお茶にも触れることができて、研究者、お茶に関心のある人、家族連れ、誰でも楽しめるイベントだ。
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家族連れでも楽しめるセンター前の広場の屋台。パフォーマンスもありお祭り気分満載である。
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蒸した茶葉の手もみの実演。緑茶は蒸して揉んで乾燥させて作る。
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島田市茶業振興会金谷支部のお茶詰め放題、約400gが1000円 お値打ちだ。
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海外含めて茶関連のメーカーや団体の商談・紹介のブース、台湾からの出展が多かった。八女や鹿児島からの出展。茶筒メーカーも出展。
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各国の様々のお茶文化を体験するコーナー。
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世界の茶や道具や関する展示、珍しいラオスのラペソー(食べる茶)や台湾の擂茶(レイチャ、擂り潰して飲む具入りの茶)も。
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食の文化センターでは、「世界にはばたく和食文化 展示:和食文化の歴史」の「東海道の食の名物」「錦絵に見る江戸の食文化」
「江戸の行楽の食の楽しみ」コーナーに展示パネルと資料を貸し出しました。
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PB082644.JPG一般向けのステージ講義からシンポジウム、専門家による学術会議まで、盛りだくさんでまさしく世界のお茶のお祭りである。
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REPORT

主催者挨拶 静岡県経済産業部理事 大谷徳生
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今年、静岡は世界に誇る3つの遺産登録に関連している。まず2013年5月に静岡の茶草場(ちゃぐさば)農法がFAO(国際連合食糧農業機関)の世界農業遺産(世界重要農業遺産システム)に認定された。※茶草場農法 秋から冬に掛けて茶畑の周辺にある【茶草場】のススキなどの草を刈って茶畑に敷く伝統的農法。茶の味や香りが良くなる効果とともに【茶草場】は生物多様性の保全にも役立っている。静岡の茶草場農法

 2つ目に、富士山が2013年6月に(富士山-信仰の対象と芸術の源泉)としてユネスコの世界文化遺産に登録された。3つ目に、「和食;日本の伝統的食文化」が2013年12月にユネスコ無形文化遺産化決定の予定である。静岡県・静岡市は、和食の根幹を成す米を日本一食べ、緑茶を日本一消費し、わさび・かつお・マグロ・しらすなどの生産が日本一で「和食先進県」であるとの自負がある。また439品目の食材を生産する「食材の王国」なのである。豊かな食文化に支えられて介護を必要としない「健康寿命」では男性が2位、女性は1位で総合1位である。今後とも、和食文化の保護継承をリードしていきたいとの挨拶があった。


基調講演
「『茶の都しずおか』づくりについて」
     中村羊一郎氏(静岡産業大学総合研究所客員研究員)
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鎌倉時代の禅僧である聖一国師が、安倍川沿いの足久保に茶を播いたのが静岡のお茶の歴史の始まりである。茶の湯につながる抹茶の文化と並行して、庶民のお茶文化として番茶を泡立てる振り茶があった。ブクブク茶(沖縄)ボテボテ茶(松江)バタバタ茶(富山)を始め今も残っており、かつては静岡にも同様のものがあった。また近世には、お茶を飲んで大騒ぎをするために禁止令の出たり、仙台には女性がお茶を持ち寄る大茶があり、庶民が大勢でお茶を分け合って飲む茶文化があった。庶民から将軍までお茶を飲み静岡はその生産地であったのだ。

近代になり生糸と並んで茶は重要な輸出品となった。そして日本全員が煎茶を飲めるようになり国内市場が充実したのは戦後のことなのだ。新しい時代にあったお茶の在り方はどうあるべきか。正しい歴史認識にもとづいてお茶の新しい歴史を作っていきたい。歴史的にみれば庶民の飲むお茶はつい最近までは煮出していたものが、急須で淹れるようになり、現代はペットボトルで出来合えを飲むようになったのだ。今後、お茶の文化が日本や静岡にどう影響を与えるのかを考える時には、産業とのいかに関連するかの視点が大切であろう。


鼎談
「『料理・酒・茶』~『和食文化』を次世代に伝えるには~」
   熊倉功夫氏(和食文化芸術大学学長、「和食」文化の保護・継承国民会議会長)
   田村吉弘氏(日本料理「つきぢ田村」三代目)
   後藤加寿子氏(料理研究家)
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熊倉氏の進行により鼎談が進められた。まず熊倉氏よりユネスコの無形文化遺産になる和食文化は、料理そのものではなく、和食を支える我々の価値観や想い、人と人のつながり、食べ方など文化として和食を捉えようということで、どんな視点からでも語れるものだと説明された。田村氏は料理人の立場から後藤氏や料理を教える立場から発言された。田村氏から現在は、おばあちゃん→お母さん→子供の家庭料理の継承がとぎれている時代だ。「お袋の味」が「(買い食いの)袋の味」になっている、料理も堅苦しく考えずに和食の「和」のごとく「和んで」楽しもう、一方で親世代は教育には熱心過ぎて「躾」が「押し付け」になっていると言葉巧みに指摘した。後藤氏は、料理の先生としていた母親の時代は生徒も家庭料理が出来たので料亭の味を教えてくれと言われたが、現在は家庭料理そのものを知らないので家庭料理から教えてほしいと言われると、同じく家庭料理の危機に触れた。

料理は難しく考えずに楽しく。 田村氏
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京都育ちの後藤氏は、昔の京料理はご飯にあうように味が濃かく、またおかずのことを「おまわり」といい「今日のおまわりはなんにしまひょ」などと言って、これはご飯のまわりにおかずがあるからで、やはり和食の中心はご飯であると強調された。和食の最大の特徴である「だし」について、日常の家庭料理では市販の風味調味料で十分であり、「うま味」調味料についても上手に使いこなそう、そして特別な日には本物のだしを加えるともっとおいしくなる、「だし」「うま味」を上手に使うことで塩分も控えられるなどの食卓のヒントが提供された。「煮えばな」という言葉も使わなくなったが、バラバラな時間に味噌汁を出さざるを得ない時も、ほんのちょっと味噌を入れて「煮えばな」の美味しさを味あわせようなど、家庭料理においての「ひと手間の大切さ」が論じられた。「つきぢ田村」の先代が大学に調理実習に行った際に、素材・調味料の分量を「見計らい」で調理をしたのに対して、調理実習では正確な分量の提示を求められた逸話が披露された。田村さんから、プロだから気温や素材の状況により感覚的に調味料の量を瞬間的に見極めできるのだということではなく、素人でもまず薄味で作って足りなければ足せばよいわけだが、その場合、素人であっても味の感覚がきちんとしていないといけないという重要な指摘がされた。後藤氏からも、市販の惣菜の味は一口目はたいへんおいしく作られているが、食べ続けると濃い味付けで喉が渇くことがよくあるが、料理を作る際には一口目からおいしい場合は味が濃すぎる場合もあり要注意との話しがあった。


一口目からおいしいのは味が濃すぎるかもしれないので注意して。 後藤氏
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田村氏は、料理の本を作る際に2人分でレシピを書いてほしいといわれて複雑な思いをされるそうだ。家庭料理の危機は、和食の問題以前の社会的な問題もあるのではないかと感じていて、ご家庭では必ず家族8人で食卓を囲むようにしているとのことだ。また食事を作って人を招く機会を持とう、食事が人と人をつなぐ役割を果たすのだと主張。ついで素材の味をいかすことに話題が移り、料理も子供も化粧も手をかけ過ぎると変になりますね。と後藤氏も言葉巧みに表現された。野菜や青魚のおいしいのはとれたてだが、白身の魚は一晩ねかせるべきでありこれを熟成という、旬を重んじる、このように素材の持ち味を最大限に生かす、これは和食文化の根底にある日本人の自然を尊重する価値観にも通ずることであり大切にすべきである。最後に熊倉氏より、人間には文化があるゆえに、動物と違い砂漠でも極地でも生きていける、自然環境にあわせてそれぞれの地域で工夫して文化を形成してきた。それが変化して、日本は海外からの食材調達依存が高まり、家庭料理も危機的状況になり、和食文化は危機的状況なんだと認識しなければならない。今後はどうすべきかとの問いかけがあり、後藤氏は若い人向けに箸で食べられる肉料理にあう和食をどう作っていくか、田村氏は一緒に料理する、食べる機会を作る、誰とたべるかを大切にしたい。料理は楽しいですよ。と提案された。熊倉氏が、料理人が担う和食ではなく、我々日本人全員が担い手である、日本の社会的習慣の表れである和食、家族のつながりのためでもある和食を大切にして次世代に伝えていく覚悟を持とう。和食の良きパートナーである、お茶もお酒も含めて。の発言でしめられた。
 
大切な和食文化を次世代に伝えていく覚悟を日本人全員が持つことが重要だ。 熊倉氏
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シンポジウムに参加して
田村氏と後藤氏の「料理を難しく考えないで楽しみましょう」という言葉は、長年の食に対する鍛錬があって出てくるもので重みがあった。一般人の我々にとって、料理人や先生は、おいしい料理を作ってくださる上手に料理を教えてくださる以外に、食に対する考え方や向き合い方についても教えてくれる存在なのだと実感できた一日だった。
 ユネスコ無形文化遺産化をきっけに今後、我々普通の日本人が和食文化にどう取り組むのか、熊倉先生のいわれる「覚悟」の一語をよくかみしめたい。<了>