第1部文化財行政の在り方 ユネスコの無形文化遺産になるということ

2014年03月03日(月)

講師: 宮田 繁幸

REPORT

宮田 繁幸 
文化庁伝統文化課芸能部門主任文化財調査官

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「和食」をユネスコに推薦する段階で、農林水産省が主催した検討会にアドバイザーとして参加し、昨年の12月のアゼルバイジャンの会議まで関わった経緯からお話しします。

 ユネスコの無形文化遺産になるとはどういうことかというと、条約に「人類の無形文化遺産の代表的一覧表」という記述があります。原文を和訳すると「無形文化遺産のよりよい可視性、認知度を強化し、その重要性の認識を高める。そして文化の多様性の尊重に関わる対話を促進する。そのために政府間委員会が、関係国の提案に基づいて、人類の無形文化遺産の代表的一覧表を発表する。それは定期的に更新される」となります。この代表的一覧表に載ることを、日本ではユネスコの無形文化遺産になると言っているのです。もう少し詳しく説明すると、代表的一覧表に載るためは、芸能や社会的慣習、儀式、祭礼行事、伝統的工芸技術などであり、さらにコミュニティーが自分たちの遺産として認めていることが必要です。

 また無形文化遺産は、条約の締約国がユネスコに提案をし、その提案に基づいて政府間委員

会の補助機関が予備審査を行った上で、最終的に12月にあるバクーの会議で決議がなされます。中華料理が無形文化遺産になっていないのは、単純な理由で中国が提案していないからなのです。和食は「和食;日本人の伝統的な食文化-正月を例として-」というタイトルで、正月の行事との関連をフィーチャーした形で提案されました。食材、栄養バランス、自然や季節の移ろい、年中行事との関わりという4つのポイントを中心に据えた内容でした。

 代表的一覧表に載るにあたり5つの審査基準があります。まず1番目は条約の無形文化遺産を構成する定義に該当するか。2番目は記載されることによって、当該無形文化遺産の可視性や重要性の認識、対話の確保にどのように貢献できるか。そして世界中の文化的多様性を反映して人類の創造性を証明するということが認められるか。3番目は保護措置が図られているかで、4番目は関係のある社会、あるいはコミュニティーの同意を得ているか。5番目は国内の無形文化遺産の目録に含まれているかです。委員会は、「和食」について社会的な慣習として自然を尊重していることや、正月行事に典型を見る社会的・文化的な特色であることなどを高く評価してくれました。そして最終的に5つの基準を全て満たしているということで代表的一覧表に記載するという決議がなされたわけです。

 「和食」以前に我が国から登録された21件の無形文化遺産は、国・文化庁が文化財保護法に基づいて長らく保護してきたものでした。しかし「和食」については、ユネスコに提案したのと同時に、並行して国としての保護が始まるという画期的なケースで、本日は皆様方から具体的な保護の方向性についてのご意見が聞けるのではないかと思っています。

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