食文化ノ・ミカタ Food Culture's Eye

洋書についてのあれこれ

洋書についてのあれこれ

最近の食文化、栄養、料理の研究論文は英語で発表される機会がとても多くなりました。そこで英語圏の書籍を手にするお手伝い情報をまとめました。

洋書の選択のコツ

和訳の本、特に波長の合うと感じた翻訳の訳者あとがき、参考書目などをベースにして選ぶ。ひいきの書評家、学者の薦めている本や作家から選ぶのももちろん良し。評論集、論文集は頭から読まず、適当に読み、好奇心のエンジンがかかったところからスタートする。それぞれ別の時期に発表したものを(編集が特定の意図を持つことも有り)一纏めしたものなのだから、どこから読んだって構いません。やる気になる本が一番栄養になってくれます。つまらなかったら読みとばしたってかまいません。

海外の出版社(英語圏)

出版社の名前は覚えておくと何かと便利。「当社が強いのはこの分野!」と自己主張がハッキリした会社が多く、それぞれ背表紙にシンボル、ロゴ・マークをつけていることも多いので一度目にしておくと販売コーナーで迷わずに済む。

ラウトレッジロゴ.JPG   ラウトレッジのロゴ・マーク

洋書の背表紙.JPG

洋書は本棚にならぶとこんな感じにタイトルも横倒しになります。(右倒し)

あらかじめ大きさや色、場合によってはISBN*などで検索し、

書店のほうでレジに用意してもらって購入しましょう。

さもないと首を90度に倒したままタイトルを探すハメになりますよ!

*ISBN・・・13 桁の数字であらわされる本の住所録のようなもの。

これを検索して書籍を特定することもできる。

通常、裏表紙のバーコードの近くにある。

当ライブラリーにも配架している出版社の一部

Routledge(ラウトレッジ)

人文系の学術書を扱うイギリスの出版社。たいていの分野について論文のセレクションが出ているので、気に入ったもの、何を調べるかなどを選びやすい。ただし、お金に特別余裕がないと個人で所有するのはむずかしいので(1冊~十万円)図書館などで参照してください。現役かつ一級の研究者の手による読みやすく充実した内容の本が並ぶがとにかくコストは高いのです。大型シリーズ本、大百科事典など、ふつうの社会人の給料3か月分に届くことも珍しくありません。(年収に届くことも・・・)

一方、神保町でぶらつくと定価の百分の一、2、300円で売っていることもあります。大学の教授の退官、新年度に付属図書館の入れ替えを行うなどの理由でタタキ売りされていたこともございました。論文集の目次を参考にしてその分野をリードしている学者の名前を知るのにも役立つ。

ラウトレッジ食研究アンソロジー.JPG

ラウトレッジの「食」に関する論文・エッセイのアンソロジー。内容はレシピ、栄養学、経済、人類学、哲学、文学・・・とにかく食文化の研究で重要なものが選択されている。しかも注釈や参考文献目録などをそれぞれの分野の専門家、1流の研究者が作成と査読をしてくれていて充実。

目次を眺めて「食の経済ならこの人、レシピならこの人・・・」と自分なりに見当をつけることもできる。

当図書館でぜひ手に取ってほしい本の一つ。

Dover Publications

一度絶版になった名著を、頑丈かつ安価なペーパーバックとして再出版することで有名な出版社。

再販する本の選択眼には定評があり、なかには1世紀以上古い本でありながら現役の教科書として通用しているものまである。

日本では理工系大学などでこの出版社のテキストのお世話になる学生が多いが、じつは理工系に限らず人文系の著作もカターいものからなじみ深いものまで幅広く扱っています。

エピキュリアン.JPGアメリカのシェフCharles Ranhoferの著書The Epicurean,(1894),

フランスはサン=ドニ生まれの彼はアメリカ・レストラン界の大立者となり、

その著書である本書はエスコフィエの一連の名著に比肩するといわれる。

当ライブラリーで所蔵しているDover出版の名著。(高橋忠之氏寄贈)

オックスフォード出版局

世界で1番権威のある英語辞書を出している大学出版社の大御所で、ラウトレッジに比べると安くて日本の大型書店で売っていることもあるなど、手に入りやすさも魅力です。

オックスフォード大学は人文系の研究で手を出していないものはないとも言われるほどの存在感。もちろん食文化の本も質の高いものを数多く送り出しています。

ただし、本のつくり方も筆者も癖が強いものが多く、けっして学習用の辞書などから浮かんでくる一般向けのイメージ、万人向けの出版社ではありません

著作物の発行数も膨大で手がかりなしで闇雲に漁っても得られるものは少ない。なんのために何を調べるのかキチッと方針が決まった時に読んだほうがいいでしょう。気に入った学者の名前はPCのメモ、スマートフォンのメモ機能などに控えておくと後々役に立ちます。

英語圏以外の大学出版の英訳

注意すべき点はオックスフォードと大体同じ。

サラマンカ、ボローニャ、ケルン、ヘルシンキ、パリ、モスクワ、北京など各国を代表する大学の論集は結構な頻度で英訳が出ているので、各大学の英語名をAmazonなどで検索するとひっかかることもあります。

各地の言語が読めるならこの手の英訳は基本参考程度、気にしなくてもかまいません。

しかし英語はコトバの定義や意味をトコトンハッキリ、クリアにさせる、文章の一番大切な部分を強調する、という性質があるため、論文やエッセイの中にあいまいな表現の部分をみつけたら参照するとストン、と腑に落ちることもままあります。

特に哲学よりのエッセイや文芸上の表現などでわからなくなったら手に取ってほしい。

完全に余談ですが日本でも若い学生に人気のある、でもムツカシイ本を書くことで有名なフランスの哲学者、デリダは自分の著作の英訳を読んで

「ああ、僕の言いたいことはこういうことだったのか、これならスッキリとわかるなあ」

とつぶやいたそうな。

その他人文系出版社の名門(文系への偏りがあるので注意してください)

ランダムハウス

日本では小学館からでた辞書でも有名なアメリカ最大の出版社。日本語を学習する外国人向けの辞書の質が高い

たとえば、Random House Webster's Pocket Japanese Dictionary

いまでこそほかの出版社でもおこなっていることだが、日本語に特有な食事の表現「正座」「すきやき」「さしみ」「おにぎり」などをできるだけ難しい単語を使わず簡潔に説明している。和英部分の日本語訳も素晴らしく、日本人にとっても、特に英語圏の人々に日本の食文化を説明したいときに役立つだろう。

·Faber & Faber

文学系の名門。我が国のフランス料理の普及と発展に多大な貢献をした辻静雄の師匠の1人、M.F.Kフィッシャー女史の書籍はここから出版された。彼女は当時、「アメリカでもっとも洗練された英語を書く女性」と詩人、W.H.オーデンに絶賛の書評を受けていたのです。当ライブラリーにも彼女の書籍は配架しています。ぜひ手にとってご覧ください。(出版社は別です)

ART OF EATING表紙.jpg

↑はM.F.Kフィッシャー女史の代表的著作5冊を一冊にまとめたもの。

表題にもなった出世作「ART OF EATING」はもちろん、

アルファベットに託して食文化、レシピを26のエッセイに綴った

「グルメにささぐABC」など彼女の遊び心が収録作全編に漲っている。

John Wiley & Sons(日本語公式サイトあり)

世界最古の出版社でもある理工系の名門。ノーベル賞が設立されて以来、受賞者450名の著作をしてきた実績を持つ生き証人のような存在。医学、栄養学などに強いのはもちろん、この手の出版社には珍しく、日本、韓国、台湾向けのサイトがあり、みやすい。日本国内の研究者によるセミナーなども行い、イベントの告知もしているので学術講演会などに興味のある人はそれだけでも便利。

書籍のネット公開

以下の大学は所蔵している蔵書を著作権に関係なくネット上にて一般公開している。(Internet Archiveなど)個人の利用については寛容。しかしInternet・Archiveは洋書の動画投稿サイトともいわれる場所でもあり、版権などについては対策は追いつかず、保証もない。大学、研究機関が名前を出しているもので特に書籍の種類が豊富、映像がきれいなものを選んだ。

トロント大学

インド理科学技術研究院 

コーネル大学

シカゴ大学

ハワイ大学

洋書購入のサイトについて

Book.Depository

新品の洋書を郵送費・送料など抜きで購入できるサイト。本の値段が日本円で表記される、日本円で購入が可能など使いやすい。本の種類にもよるが購入から到着まで2,3週間ほどなので手元に早くおきたい場合などにも使われる。英語以外の言語にも対応している。たとえばロシアのレシピブックは元のロシア語版、英訳版の両方を一度に検索できる。メジャーな書籍の翻訳ならば、北欧、東欧からアジアやアフリカ、極東に至るまで扱っている。フィンランド語、ポーランド語、ヘブライ語、ペルシャ語、ウズベック語、スワヒリ語、ズールー語、ベトナム語・・・と気になったら調べてみると面白いかもしれない。

AbeBooks  

主に希少本、絶版本を取り扱う古書購入サイト。一つの書店が運営しているわけではなくこのサイトに登録している古書店の在庫を横断検索できるサイトである。高価な学術本が安価に入手できるので学生から研究者まで利用者の幅も広いが、本の状態を事前に把握することはできない。厳密にいうと書籍の状態など古書店主のさじ加減で決まってしまい、ズタボロでも評価が良好だったり、目に見えないキズだけで悪かったりと共通のボーダーラインを持っていない。更に本が流れに流れてインドの山奥などインフラのととのっていないところの古本屋なども登録しているためちゃんと届かないこともある。

神保町の洋書専門店

北沢書店 

人文系の書籍における神保町の老舗。店主が海外に直接出向いて本を購入しているため質の良い書籍が並ぶ。ただし値段は高め。サイト内の在庫検索で量産タイプのペーパーバックは検索ができない。英語の文献が特に強め。

装丁のきれいなハードカバーの本をインテリアとしても販売している。実際、神保町のある有名珈琲店で、この書店のラベルがついた本がインテリアとして飾られているのを目にしたことがある。

田村書店(2F)

同じく神保町の老舗、一階は学術書の和書を取り扱う。フランス語、ドイツ語、古典ギリシャ語に強い。人文の書籍全般を扱い、値段も良心的だが、営業時間は短め。(これは神保町の古書店共通の特徴)在庫の検索は可能だが、状態確認が難しい。

営業日には必ず店頭でたたき売りを行っており、そこに並ぶ本はジャンルこそ決まっていないが新旧の名著ばかり。

イタリア書房  (BOOKTOWNじんぼうの紹介ページ) (オンラインショップ

名前の通りイタリア文化全般に強い書店。日本唯一のイタリア直販の書籍店。現地に支部を持っていて新刊の販売も行っている。スペイン、ポルトガル、ラテンアメリカの国々にも造詣が深く、独自のルートを持ち、大使館、シェフなどプロ御用達のお店としても有名。店舗での販売ももちろん行っている。

HPの右下に「イタリア語学習者の部屋」というリンクがある。イタリア語のテキスト、辞書などをプロの目によるレヴュー付きで紹介しているありがたく、貴重なページ。

ポルトガル語スペイン語にも同様のページがある。

悠久堂書店

洋書専門のお店ではないが、神保町でしかも料理の本といえばココ!ともいわれる100年越しの老舗である。HPもおしゃれで使いやすく、特定ジャンルの本を販売するイベントの告知もしている。店頭のたたき売りも新品同様のものが多く、見ているだけで楽しい。

PAGE
TOP