ジャガイモのソーセージ

ヴェダレイ料理

 

まずは写真をご覧いただきたい。長いソーセージをグリルして、白いソースをかけた料理じゃないか、といわれるでしょう。それにちがいありません。だが、ただのソーセージではないのです。
 
この夏、酩酊先生は、リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国を訪ねる旅行にお出かけになりました。この写真は、リトアニアの首都ビリニュスのレストランで、先生が召しあがったジャガイモのソーセージなのです。リトアニアは、古来から農業・畜産がさかんな国で、ライムギでつくった黒パンを主食とし、チーズやサワークリームなどの乳製品をよく食べてきた。17世紀にジャガイモ栽培が導入されると、人間が食べるだけではなく、ブタの餌ともされ、養豚が発展した。豚肉、ジャガイモ、乳製品が、リトアニア料理の基本的な食材である。
 
ジャガイモのソーセージであるヴェダレイの製法を紹介しよう。本来は農家がブタを屠畜したときにつくる食品であるが、現在はリトアニアの名物料理として、レストランでも供される。
 
 ① ブタの腸をよく洗浄し、腸の外側をニンニクでこすって、一日以上置く。
 ② 皮をむいたジャガイモを摺りおろして、水切りをする。
 ③ ブタの脂身とタマネギを刻んで炒め、摺りおろしたジャガイモに、炒めた脂身、タマネギ、塩、マジョラムを混ぜて、ペースト状にする。
 ④ ③を①に詰め、焦げ目がつくまでオーブンで焼くと、できあがり。
 
わたしが食べたヴェダレイ料理は、刻みベーコンとジャガイモ・ソーセージをゆでたものに、サワークリームをかけたものであった。外観は普通のソーセージであるが、ナイフで切ると、白色のジャガイモの詰め物があらわれる。焦げ目のついた外皮を、歯でかみ切る食感は、普通のソーセージと変わりない。詰め物のジャガイモは、粘り気のあるモチモチとした食感で、脂身の重厚感もあるし、そえられた刻みベーコンの燻製臭があいまって、植物性食品とも動物性食品とも判断ができないような味であった。アルコール度数50度のハチミツを蒸留した地酒にあう料理であった。ゆでたジャガイモが別皿で供された。ジャガイモ料理の口直しに、ジャガイモを食べるのである。
 
もうひとつのリトアニアの名物料理にツェペリナイがある。摺りおろしたジャガイモの生地に、挽肉やカテッジチーズの具を詰め、気球のような楕円形にまとめて、ゆでたり、揚げてつくる料理である。餅のような歯触りがある。ツェペリナイという名称は、気球のツェッペリンに由来し、20世紀になってから有名になった料理であるという。
 
獣肉を原料としない日本独自のソーセージがある。魚肉ソーセージである。伝統的な蒲鉾製造技術と西洋食品が結合した魚肉ソーセージは、日本の発明品である。魚肉ソーセージは、1950年代に普及した。わたしの少年時代は、ソーセージといったら魚肉を原料とするものであり、ベーコンはクジラでつくったものであった。ブタ肉でつくったソーセージやベーコンを、はじめて口にしたのは1960年頃のことである。その後、経済上昇とともに、獣肉原料のソーセージが普及し、捕鯨問題でクジラのベーコンは高価な珍味化した。
 
現在では、魚肉ソーセージを売る店はすくなく、値段も獣肉のソーセージとたいして変わらない。ひさしぶりに食べてみたら、そのままかぶりついても、皮をむいて普通のソーセージ料理にしても、なかなかいける。獣肉ソーセージにくらべると、さっぱりとした味で、低カロリーで、身体によい魚脂をふくむ、健康によい食品である。日本の名物ソーセージとして、世界に売り出したらどうだろう?