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東海道五十三次 品川 川崎へ二里半

  • 絵 師:葛飾北斎
  • 刊行年:文化元年(1804)年

43~53は全て東海道取材シリーズに属する後摺品。このシリーズの最初の形態は、東海道の各宿駅図に、それぞれの地域に因んだ狂歌―乃至数首とその狂歌師名とを添えた様式。この初摺様式作品は極めて希少で、全揃いと見られるものは、墨田区所蔵の帖体裁の一本が知られるのみ。これも帖装の際、上下左右をトリミングし、原装幀は不明。ただ他に残る稀少の数点中「鞠子」「藤枝」の枠外に「春興五十三駄之内」と摺刷があり、一応これが総合シリーズ名とされている。図中「藤沢駅」の道路標に「享和四甲子年正月吉日」(参考図A参照)、石薬師の御手洗に和甲子春」の文字が見え、享和四年の刊行、但し享和はこの年の2月11日に文化と改元しているので現今の慣習で文化元年(1804)正月の刊行と特定されている。京都図のみ刊行されたか否か不明。図表も同じ駅の異図や、付近の名所も含ませ、また形態も8図、横に2倍した横長判を含み、全59図が知られるのが現状。このシリーズは、後に数図の省除、狂歌と狂歌師の削去、そして北斎門人の柳川重信による加筆などと出入の顕著な後修品が製作され、さらに後代の改変品もある。(これらについては永田生慈編「葛飾北斎東海道五十三次図」岩波社平成6年参照)当館所蔵の11図は叙上の後修品と見られ、すべて北斎の作品。後摺故、狂歌はなく、色板に改変が見られる。削除された初摺品の狂歌(図B)は、図中の食品判定に有効ゆえ、解説中に引用しておく(すべての図に共通)。なお、原初摺図と狂歌を省除した図(CIC2)も参考に添えておく(原初摺図は各宿駅図に添付)。当「品川」は3人の女性が、品川から大森へかけての名産「浅草海苔」(後掲『東海道名所図絵』参照)を漉いて製造する所を描く。『東海道名所図絵』巻六に「海より取得し海苔を磯部にて汰(ゆり)り、塵をより包丁にてよく敲き、それより簀へ薄く漉流し干し乾かすなり世人品川海苔といはずして浅草といふは、むかし浅草にても取しにや」とある。当図の初摺の狂歌は「品川や 背なは荒小田 妹は海苔 打かへしたる 春のすきそめ 浅瀬庵永喜」。

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